大幅利上げでインフレ抑制も 成長犠牲で綱渡りのトルコ 谷村真
実際、非居住者によるリラ建て国債及び株式投資額は、19年初めに500億ドル程度だったが、大統領選時点では230億ドルに減少していた。中銀が大統領選後に金融引き締め姿勢を明確に示したことで、外国人投資家の資本流入の戻りは早く、足元では500億ドル水準に回復している。トルコでは資本フローと為替レートの相関性が高いが、政策転換による資本フローの戻りに伴い、実質リラ高が続いている(図)。 ◇BRICSとの関係強化 一方、居住者の観点では、低金利やリラの先行き不安によって、貯蓄をドルや金(ゴールド)に替える動きがリラの価値を下げていた。そのため、中銀は利上げと実質リラ高にコミットすることで、リラ預金の利息を増やしつつドル建てでみた際の目減りを減らそうとした。預金のリラ比率は一時3割程度まで低下していたが、足元ではリラ預金保護策を縮小したにもかかわらず、リラ比率は6割に回復している。 信用面では、24年3月に融資抑制策を強化したこともあって融資の伸びが鈍化し、国内の超過需要は沈静化した。24年4~6月期および7~9月期の国内総生産(GDP)は前期比でマイナス成長となり、これもインフレ率低下に寄与した。為替の安定化と信用抑制により、24年11月時点でインフレ率は前年比で47%に減速しており、このまま推移すれば年末時点では45%程度に低下するだろう。 今後については、政府の中期経済計画では26年末にかけてインフレ率が1ケタに低下する一方、毎年0.5ポイントずつ成長が加速するシナリオであるが、これはやや楽観的過ぎると言わざるを得ない。サービス価格の上振れや賃金インフレなども見られる中、インフレ率をさらに引き下げるには、金融引き締めの継続に加え、これまで遅れていた財政の引き締めが必要になるが、これらは成長を押し下げる効果を持つ。なお、市場は利下げが近いとみているが、利下げをしつつも融資抑制策を取ることで金融政策全体としては引き締めの継続が可能だ。