なぜ立浪監督の中日は失速し、新庄監督の日本ハムは躍進したのか? 広岡達朗は「野球観の差」と一刀両断
広岡の持論は、こうだ。 1年目は種まきとして選手にチャンスを与え、適性を見極める。2年目に芽を出させることで、投手陣の整備をより強化する。そして3年目に収穫として、結果を出す。 現に広岡は、ヤクルトでシーズン途中から監督就任を含めて3年目に日本一になり、西武では1年目に日本一となった。「野球はピッチャーが8割」という広岡の提言どおり、新庄も投手陣の整備に余念がなかった。 伊藤大海(14勝5敗)、加藤貴之(10勝9敗)の二本柱に加え、移籍組の投手の活躍が目立った。 オリックスから移籍の山崎福也が2ケタ(10勝6敗)を挙げ、阪神から移籍の齋藤友貴哉が25試合に登板して1勝1敗1セーブ、5ホールド、また昨年ソフトバンクから移籍の田中正義が4勝4敗20セーブ、12ホールド、中日から移籍の山本拓実が6勝0敗9セーブ、3ホールドと、それぞれがキャリアハイに近い成績を残した。 野手の移籍組にしても、ソフトバンクから現役ドラフトで獲得した水谷舜が97試合に出場し、打率.287、9本塁打、39打点、中日から移籍の郡司裕也は127試合の出場で打率.259、12本塁打、49打点と、ともにレギュラー格としてチームに貢献した。 【大砲獲得にこだわった立浪監督】 日本ハム躍進の原動力となった山本や郡司は、中日からの移籍組だ。中日といえば、2022年の現役ドラフトでDeNAから獲得した細川成也が大ブレイクしたが、昨年オフ巨人から獲得した中田翔は、今季は62試合の出場にとどまり打率.217、4本塁打、21打点と期待外れに終わった。 「新庄は大谷翔平(現ロサンゼルス・ドジャース)や近藤健介(現ソフトバンク)といった主力が抜けたが、一軍半以下の選手に満遍なくチャンスを与え、『これぞ!』と思った選手は我慢して使い続けた。清宮幸太郎にしても、時には突き放しながらも二軍で鍛え直させ、今シーズン後半はようやく覚醒し、規定打席には足りなかったが、打率3割をマークしたことは大いに自信となったはずだ。 はっきり言って、選手としてのキャリアは立浪のほうが上かも知れんが、感性という部分では新庄のほうが圧倒的に上だ。その差が、3年目の成績に表れたということだ。新庄は現状を鑑みて、どういうチームをつくるべきかしっかりビジョンを描きチームづくりに勤しんだ。かたや立浪は、バンテリンドームという広い球場を駆使した野球をすればよかったのに、得点力不足という周囲の声に惑わされ、大砲にこだわった。別に大砲にこだわってもいいが、石川昂弥や鵜飼航丞をどうして育てきれんのだ。大局でモノを見られるかが監督の役割であり、使命でもあるのだ」