「異様な光景」逃げ遅れた44人が死亡、出火原因は不明のまま 歌舞伎町ビル火災 警視庁150年 114/150
日本最大の歓楽街、東京・歌舞伎町で、平成13年9月1日午前1時ごろ、44人が犠牲となる都内では戦後最悪のビル火災が起きた。地上4階、地下2階建て雑居ビル「明星56ビル」3階エレベーターホール付近から出火。3階マージャン店と4階飲食店の客らが亡くなり、死因は多くが一酸化炭素中毒だった。 当時、現場付近にいた男性(46)は「ビルからは煙も火も出ていないのに靖国通りは消防車と救急車で埋め尽くされ、異様な光景だった」と振り返る。 警視庁捜査1課の捜査でビルのずさんな防火対策が判明。自動火災報知機のスイッチは切られ、防火戸も閉まらなくなっていた。避難経路の階段にはビールケースやごみ袋などが大量に置かれ通行できない状態だった。 消防隊の救助活動の妨げともなり、翌年4月には違法状態を放置した雑居ビルへの罰則を強化した改正消防法が成立。消防機関が立ち入り検査などで階段や廊下などに置かれた物に危険な状況を確認すれば、除去命令を出せるようになった。 捜査1課は燃焼実験による科学的データなどに基づき、「防火管理が十分であれば全員が助かった可能性が高い」と判断。15年2月にビル所有会社の実質的な経営者ら6人を業務上過失致死傷容疑などで逮捕した。 20年7月には東京地裁が5人に執行猶予付きの有罪判決を言い渡すなど、防火責任の重要性が示された。現場ビルは既に解体。出火原因は放火の疑いが強いとされるが、不明のままとなった。(前島沙紀)