都内唯一のチベット料理店!来日20年、元僧侶で元コンビニ店員の店主が語る故郷の味と文化
新宿からふた駅にも関わらず、人通りの少ない曙橋の靖国通り。その通り沿いに、ひと際目を引くカラフルなお店がある。 ▶︎すべての写真を見る 日本を代表するチベットレストラン「タシデレ」だ。2015年6月にオープンして以来、国内外からじわじわと注目度が上がっている。
そんな「タシデレ」の店長・ロサンさんは来日して20年。もともと日本に長居するつもりはなかったというが……。
幼少期から僧侶として生きてきた
ネパール生まれのロサンさん。チベットの動乱期に西チベットから両親がネパールに亡命したため、実は故郷チベットの地を踏んだことはない。 チベットの人々といえば、敬虔な仏教徒のイメージが強い。というのも、義務教育というシステムがなかった彼らが勉強するところといえばお寺だった。 “徳を積む”という信仰心や経済事情も相まって、かつてはどこの家庭でも1~2人の子供を僧侶にするため、全寮制のお寺に入れるのが通例であった。
「3歳から8歳くらいまではネパールの首都・カトマンドゥにあるお寺で過ごし、それから南インドにある、デプン・ゴマン学堂という大きな僧院に移った。そこでは、仏教のことを学びながら英語も少し習ったね。 デプン・ゴマン学堂は、2000人くらいのお坊さんが共同生活しているチベット仏教で重要なところ」(ロサンさん、以下同)。
南インドの僧院では勉強はもちろんだが、お寺の運営と暮らしのすべてが僧侶で賄われているため、仕事も分担して行われる。 「お寺の仕事はいろいろあるけど、当番制で厨房の仕事もよくやった。2000人分の食事を用意をするからすごい量で大変だったけど、その頃から料理をするのは好きだったんだ。 お寺の決まりごとは厳しかったけど、仲間もたくさんいて楽しかった。僧侶には階級があるんだけど、過ごすうちに段々ランクが上がっていく。最後の方は、(僧院の)事務所のアドミニストレーション(経営管理)とか秘書をやったりしていたね」。 そんな頃、僧院からアメリカへ行くよう命じられた。海外、特に欧米には、チベット仏教のセンターが点在している。ロサンさんのように各国に派遣され、その地域で布教活動をする人も少なくないらしい。 とはいえ、アメリカの入国審査は当時から難しかったようだ。