“パックはアラサー以降”は今や昔…若年層にも浸透したシートマスク タイパ・成分重視で“朝パック”を習慣化、市場も急拡大
■「朝」を前面に打ち出して大ヒット 発売当初から在庫がなくなる”バブル状態”に
『サボリーノ』は発売1年目から怒涛の勢いで売れ、すぐに在庫がなくなってしまった。2年目に再販売するが、それも瞬く間に売れて「在庫の体制が全然整わなかった」ほどの”バブル状態”に。3年目にようやく供給を安定させることができたという。「すごく需要があるんだなと感じました。おそらく興味を持って購入された皆さんが『やっぱり使いやすい』と実感されて習慣化していただいた印象があります。発売3年を過ぎてお客様の声がたくさん届くようになり、『メイクのりがすごく良くなる』などのお声をいただきました」 当初のプロモーション展開としては、「時短」や「多機能」よりも「朝用」であることを強く打ち出した。 「当時”朝活”というのが流行っていたこともあり、『朝』を前面に打ち出しました。それまで『朝用のマスク』は世の中になかったので、そこがヒットした要因かなと思います。『朝』を前面に出すことで、結果的に『時短であること』『多機能であること』も全部紐づけてアピールできました」 さらにインバウンドの波を受け、空港にもサボリーノが置かれるように。「海外では洗顔に水を使わず、ふき取りだけで終わらせる文化が根付いています。そこに時短シートマスクがマッチしたのだと思います」。 以降、“ふき取り化粧水”や“オールインワンのスキンケア”など、時短・簡単をテーマとした類似商品も乱立し、「朝にパックするのが当たり前」という考えも世の中に定着していった。美容において”時短する”という合理的な考えを浸透させたのは、やはりサボリーノの功績が大きかったと言えるだろう。
■スキンケア商品を”成分軸”で選ぶ人が増加 韓国トレンド、今話題の美容医療との共存も
コロナ禍を経て、さらにスキンケアに興味関心が集まっている昨今。今はSNSの発達もあり、美容家や医師など一部の専門家しか知らなかった美容成分情報が、一般の人にも知られるようになった。スキンケア商品を選ぶ軸としても、かつてはブランドや価格、香りなどが重視されていたが、近年では肌悩みにアプローチする効果効能や成分で選ぶ人も増えてきている。スキンケアは“面倒くさい”が、“肌に効き目のあるものを使いたい”。この両立をいかにしていくのか。「美容クリニックやエステと遜色ないコスパのよいものを使いたい」と、日常使いするスキンケア用品への期待はさらに高まっている現状がある。 「SNS発のトレンドが広がりを魅せ、今では世の中的に『この美容成分はマストで使いたい』という意向が大きく現れています。サボリーノも「ビタミンA」「ビタミンC」と成分名を大きく打ち出したシリーズを発売しましたが、これは『夜にビタミンAを、朝にビタミンCを使うと良い』というSNSのトレンドに着想を得たものでした」 今年10月には、「白玉美容」「コラーゲンピール」など昨今の美容医療トレンドを押さえた商品「メガショット」も発売。実際に美容医療で良く聞く施術の名前が入っていることでも話題を集めている。 「サボリーノのユーザーは当初20~30代でしたが、30代後半から40代に差し掛かると、保湿力が物足りなくて、他のブランドに移ってしまう方もいらっしゃいました。そういう年代の方たちに寄り添える新商品を開発したいとスタートしました。30代後半から40代の方々は今美容医療の関心が高い。美容医療自体のハードルが下がってきて『シミやクマも美容医療で取ればいい』という感じになっています。ただ、継続的に通えるかどうかというと、時間もお金もかかります。自宅で最大限のケアができるよう設計したのが今回の新商品です」 現在、美容成分や美容医療などのトレンドは、韓国がけん引している。齊藤さんも「昔は(国内の)雑誌などをよく見ていましたが、今は韓国で流行っているトレンドを見るようにしています。美容医療がどれだけ広がりを見せても、スキンケアを“習慣とする”根本的な部分は変わりません。商品が選ばれる軸は、“いかに継続できるか”に尽きると思います」と話す。 今後のマスク市場において、『サボリーノ』としてはどんな立ち位置を想定しているのだろうか。 「シートマスクの需要が広がり、若年層が取り入れる傾向がある一方で、以前のような“スペシャルケア”としてのシートマスクの立ち位置も戻りつつあります。そのなかで、社内の人たちにインタビュー調査したところ、『サボリーノ』は”生活の中にいてくれる存在”と捉えている人がすごく多くて。『メインでこれを使うときれいになる』ではなく、どんなタイミングでも、そこにいてくれて、安心できる存在。生活のなかで“ずっと使い続けられる”ポジションは、サボリーノ独自のものだなと思います」 PROFILE 齊藤久美子 (株)スタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニー 商品開発本部 副本部長。「女子開発ラボ」の初期メンバーとして、『サボリーノ 目ざまシート』の企画・開発を担当。顔にフィットする不織布マスク、ティッシュのように出てくる取り出しやすい設計など、現在のシートマスクの“原型”を作った