すぐに観るべき!! 30年ぶりの極上エンタメでよみがえる不適切なほどにあぶない刑事 Netflix映画『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』
往年の人気アクションシリーズの続編『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』がNetflixで配信中だ。1980年代に一世を風靡した、エディ・マーフィ演じる、腕は確かだが型破りなデトロイト市警察の“スーパー・クセが強い刑事”アクセル・フォーリーが、ビバリーヒルズで難事件に挑むアクションシリーズ『ビバリーヒルズ・コップ』。最新作となる本作ではアクセルが久々に刑事に復帰する。 エディ・マーフィーの人気を不動のものにした本シリーズ30年ぶりの新作は、笑いあり涙ありのエンタメ洋画の面白さを思い出させてくれるはずだ。
あの頃と変わらずアクセルは全開
30年ぶりのシリーズ第4作は、映画館の大スクリーンで見たかったと思わせる極上エンタメだ。Netflix視聴者なら、すぐに観るべき。未加入者にも、お試し視聴を勧める。老若男女が楽しめるが、特に、青春期に第1作(1984年、マーティン・ブレスト監督)を見た、僕と同世代のあなた。当時のキレキレだった自分を思い出し、オレもまだまだ、やれるんじゃないか、と思えるはず。 個人的なことを書くと、第1作の公開時、僕は高校1年生だった。あれから40年。しかし、アクセル・フォーリーは相変わらずアクセル・フォーリーのままで、 “不適切にもほどがある”“あぶない刑事”だった。 オープニングではデトロイトの街をぶっ壊し、見ているこっちもハラハラ。口八丁のマシンガントークには笑わせてもらった。唯一、想定外だったのは、ラスト。泣いてしまったのだ。ウルッとしたのではない。しっかり泣かされたのだ。「おいおい、これは同じ80年代ムービーでも『E.T.』ではない。『ビバリーヒルズ・コップ』だぜ」と自分にツッコミを入れながら。
名作シリーズに名プロデューサーあり
さて、そんな本作の見どころを少し深掘りしていこう。往年のファンなら、オープニング・タイトルから泣ける。Netflixのカラフルなタイトルの次に出てくるのは、「ドン・シンプソン&ジェリー・ブラッカイマー フィルムズ」。80年代といえば、この2人のプロデューサーコンビだった。 ドン・シンプソンは『愛と青春の旅だち』(1982)、『48時間』(1982)、ブラッカイマーは『さらば愛しき女よ』(1975)、『キャット・ピープル』(1982)に関わり、『アメリカン・ジゴロ』(1980)で一緒に仕事をしたことで意気投合した。そして、ジェニファー・ビールス主演のダンス&音楽映画『フラッシュダンス』(1983、エイドリアン・ライン監督)を生み出す。『ビバリーヒルズ・コップ』を経て、トム・クルーズ主演の『トップガン』(1986、トニー・スコット監督)を大ヒットさせた。 このコンビ作の特徴は、ド派手なアクション、小気味いい演出、そこにテンポのよいロック、ポップが乗る。見せて聴かせる五感を刺激するエンタメ。スター監督、音楽スターも多数生み出した。 僕は95年、カンヌ国際映画祭で『バッドボーイズ』のプロモーションで訪れた2人を取材したこともある。若かったこともあり、「ホンモノだ!」とミーハー心で喜んだ。ドン・シンプソンがその翌年1月にドラッグの過剰摂取による心臓麻痺で亡くなった時は心底、驚いた。 ブラッカイマーはシンプソンのドラッグ乱用に愛想をつかしたそうで、一時はコンビを組まない時期もあったが、コンビ作の最後となったショーン・コネリー主演のアクション『ザ・ロック』(1996)では「この映画をドン・シンプソンに捧ぐ」との献辞した。『バッドボーイズ RIDE OR DIE』(公開中)も「ドン・シンプソン&ジェリー・ブラッカイマー フィルムズ」とクレジットされていた。ブラッカイマーはきちんと権利を守り、義理堅い人なのだろう。 このシリーズは『ビバリーヒルズ・コップ2』(1987)まではよかったが、シンプソンとブラッカイマーのコンビが手を引いた『ビバリーヒルズ・コップ3』(1994)はひどかった。興行的に大失敗。さらには、作品、監督がゴールデンラズベリー賞にノミネートされる酷評ぶりだった。マーフィ自身も出来栄えには大いに不満を持っていたそうで、90年代後半には“このままでは終われない”とばかりに自身の製作会社による第4作の製作を発表する。 しかし、製作は難航し、紆余曲折と長い時間がかかった。マーフィーの計画は頓挫し、2006年にブラッカイマーが製作を引き継いだが、これも断念。2008年には『ラッシュアワー』のブレット・ラトナーが監督するというメディアリリースもあった。2013年にはブラッカイマーが再び製作に乗り出すも、なかなか進まず。2019年になって、パラマウント・ピクチャーズがNetflixとライセンス契約を結んだ。これも、コロナによるパンデミックのため、製作が中断。22年になって、ようやく撮影に入ることができた。 監督はオーストラリア出身で、CM、テレビ、映画で活躍する新鋭マーク・モロイ。本作が長編映画デビュー作となる。モロイ監督は失敗作の第3作を見ておらず、1、2作を参考に新たなドラマを構築したそうだ。脚本は『アクアマン』(2018)、『バッドボーイズ RIDE OR DIE』のウィル・ビールが担当している。