東北海岸線「歩く旅」外国人に人気のワケを深掘り 全線1025km開通5周年「みちのく潮風トレイル」
④ 各地の“トレイルエンジェル”たちと交流 国内外のハイカーがこぞってMCTを評価する理由のひとつが、現地の人たちとの交流だ。 漁港を歩いていると、漁を終えたばかりの漁師から話しかけられたり、道ばたに腰掛けておしゃべりをしているおばあちゃんたちから「お茶を飲んでけ」と方言で誘われたりすることも。都会では味わえない心温まるコミュニケーションで、すっかりMCTのファンになるハイカーも多いという。 その中でも、ハイカーとの交流を日々の楽しみとし、歩き疲れたハイカーたちを温かくもてなし、時には助けてくれるのが「トレイルエンジェル」と呼ばれる現地の人たち。
MCTのトレイルエンジェルの代名詞とも言えるのが、大船渡市でコミュニティスペースの「潮目」を運営する片山和一良さん。 震災後、大勢のボランティアが寝泊まりする場として始まったスペースにハイカーを受け入れ、地域の名所や飲食店などにも案内するもてなしで、「ハイカーの聖地」として知られている。 ■初夏は絶好のシーズン ダイナミックで変化に富む絶景としてハイカーからの評価が高いルート北側の青森県から岩手県にかけてのエリアは、夏場に冷たい“やませ”が入り込む日もあり、冷涼な気候が特徴。
初夏はウニやホヤといった海産物の旬でもあり、ハイキングと三陸の食を楽しむにはうってつけのシーズンだ。 一方、自然に触れ、人との出会いを楽しめるMCTだが、野生の中を歩くレジャーであることは忘れず、必要な装備や情報は準備して臨みたい。MCTを歩くことは、自然と人との共生を自分事として考えるきっかけにもなるだろう。 ちなみに筆者も週末を使い、日帰りで少しずつ友人らと歩き、現在120kmほどを踏破した。
普段は車を使うことが多いが、MCTでは徒歩でしか入れない断崖絶壁の上から大海原を見下ろし、漁港では「そんな遠くまで行くなら、軽トラで送っていこうか」と漁師から冗談ともつかない申し出を受けたり。 地元住民も一般的な観光客も味わえない場面に出会える。何年かかるかわからないが、いつかは1025kmを歩き切りたいというのが密かな野望だ。 【写真】「みちのく潮風トレイル」を歩く旅。その楽しさや魅力がわかる写真の数々(19枚)
手塚 さや香 :岩手在住ライター