東北海岸線「歩く旅」外国人に人気のワケを深掘り 全線1025km開通5周年「みちのく潮風トレイル」
中でも一般的に「滞在の約1年前から(歩く)準備をする」という外国人の動向が好調で、ルートマップは2021年は年間20部だった注文が、2024年に入ってからは月間20部に増加。 人口2326人(2024年4月末)の岩手県普代村にある「くろさき荘」には、2024年4~5月で100人前後の外国人ハイカーが宿泊。ほかの民宿も「ほぼ毎週、外国人が泊まっている」状態だという。 みちのくトレイルクラブ事務局長で常務理事の相澤久美さんは「事前にツアーを手配した外国人の数だけでも昨年の約3倍。コロナ禍を経て、MCTを歩きたいと思っていた外国人が流入している」とみる。
特に海外ハイカーの間でMCTの知名度アップに効果が大きかったのはSNS。 たとえば主に英語で運用されているFacebookのグループページ「Michinoku Coastal Trail」 には約2,000人が登録。多くは外国人で、英語で交通アクセスや宿泊についての質問が飛び交い、実際に歩いた感想などが連日、投稿されている。Facebookの日本人向けのグループと比べても登録者数が多く、投稿も活発だ。
またドイツの人気作家でハイカーでもあるクリスティン・テュルマーさんのInstagramやポッドキャスト番組などの影響でドイツ人ハイカーも急増した。 ■「本物の日本の姿が見られる」と好評 そもそも「ロングトレイル」の発祥は欧米で、アメリカのアパラチアン・トレイルなど3000kmを超えるロングトレイルがある。日本には古来、熊野古道やお遍路の文化が根づいているものの、いわゆるロングトレイルとしては後発だ。
相澤さんによると、海岸線とこれほど近い距離で連なるルートは世界的に見てもまれで、京都や東京などの主要な都市を訪れたことのある外国人には「本物の日本の姿が見られる」と好評。 海と山にはさまれた土地の素朴な暮らしぶりは「漁師町の景色や親切な人たちとのふれあいなど、歩くからこそ感じられる魅力にあふれている」という。 MCTルート上では、外国からの渡航者の荷物の運搬や預かりといったサービスや外国語に対応した宿泊手配・ガイドなどもまだまだ未発達で、これらが整備されればさらに外国人ハイカーの数が伸びる余地はありそうだ。