部員5人の南陵は善戦も16点差で敗れる ファウルアウトで終盤は4人の戦い
◇バスケットボール全国高校選手権第1日(2024年12月23日 東京体育館など) 開幕して男女の1回戦が行われ、男子は4大会連続4度目出場の和歌山南陵(和歌山)が長崎工(長崎)に64―80で敗れた。学校が深刻な経営難に陥った影響で今大会のメンバーは3年生の5人だけ。苦境を乗り越えて全国の舞台に立ったが、前代未聞の挑戦は1回戦で幕を閉じた。 メンバー5人の南陵は14人が出場した長崎工に善戦したが、16点差で敗戦。2点差に迫った第4Q残り6分42秒でファウルによる退場者が出て4人での戦いを余儀なくされると、終盤に突き放された。二宮主将は「3年間の集大成。南陵らしい、走らないバスケを40分間継続して、目の前の試合に勝ちたい」と一戦必勝を期していたが、白星は遠かった。 学校が深刻な経営難に陥り、現3年生が1年生だった22年に教員への給料未払いや公共料金の滞納など問題が多発。教員が授業をボイコットするなど混乱し、不安を抱いた生徒が大量に転向した。行政に新入生募集も禁止され、40人以上いたバスケ部員が今季は6人。寮の朝食が菓子パン1個だけの生活が約2カ月続いた時期もある。家族からの食事支援や、チーム運営費をクラウドファンディングで募るなどして苦境を乗り越えてきた。 紅白戦もできない状況で、8月の全国総体では1回戦を突破。今大会の県予選も勝ち抜いたが、その後、身長2メートル5の留学生が一時帰国して今大会は5人での戦い。消耗を抑えるため、時間をかけて攻める“走らないバスケ”を掲げるが、和中監督は「6人と5人では天と地の差。1人休めていたのが、全員がコートに立ち続けないといけない」と厳しい戦いを覚悟していた。 校歌はレゲエ。型破りな学校法人は校名変更前の09年にも不明瞭会計が問題化し一時休校している。大人の事情に振り回されながら、3年間戦い抜いた5人の高校生活は勝利に劣らない価値がある。試合終了間際に藤山がブザービータで決めた3点シュートはバスケの神様からの贈り物のように感じられた。 ◆和歌山南陵高 元衆議院議員の井脇ノブ子氏が理事長を務める南陵学園が1990年に和歌山国際海洋高の校名で設立。09年に不明瞭な会計が発覚し、井脇氏は10年に多額の負債を残して校長と法人の理事長を辞職した。一時休校し、16年に現在の校名で再開校。22年には教員への給料未払いなどの問題が多発。教員が授業を行わないストライキを実施した。行政から生徒の募集や入学を停止する措置を命じられたが、今年4月に新理事長が就任して11月に解除された。