起死回生「ラヴィット!」プロデューサーが見いだした朝帯番組での戦い方
ある転機
「このままいけば打ち切りもある」。編成経験が長い辻は危機感を感じていた。どうにか打開策を探るが、手がかりさえ見つからない日々が続いた。 大きな転換点となったのは、ある日のロケVTRの仕上がりをチェックしていたときのことだった。 「『たったの10分2品レシピ』というコーナーでした。ロケ中、ニューヨークの嶋佐さんがとにかくボケまくっていたんです。恐る恐るでしたが、そのボケを最大限生かしたVTRにして放送しました。それまでだったら朝番組として情報を伝えるために仕方なく切ってしまっていたような箇所もできる限り生かして」 すると、VTR明けのスタジオに小さな変化があったという。 「相方の屋敷さんが驚いていたんです。『嶋佐のボケが全部使われてるよ!』って。ニューヨークのお二人のテンションは上がっていたし、スタジオのウケも非常によかったんです」
生放送中、副調整室の定位置にいた辻は感じるものがあった。 「確かに、こんなに振り切ったVTRは朝から見られない。それまで私と総合演出がVTRの最終チェックをしていたんですが、実は『朝の情報番組』という常識の中で、ディレクターが既に落としてしまっている芸人さん達の笑いがもっとあるのではないかと思ったんです。これまでの常識に捉われずに芸人さん達の笑いをできる限り生かす編集をしてほしいとスタッフに伝えました」 それ以降、VTRの作り手はもちろん、出演者の意識も変わった。芸人たちは自分の持てる才能を惜しみなくロケにつぎこむようになった。 「出演者が乗ってくれるとVTRも面白くなるし、スタジオも面白くなる。こんなに芸人が熱くなってくれる経験はなかった。はっきりとした手応えを感じました」
開き直り
開始から数カ月で番組の軸が決まった。各曜日の担当ディレクターと出演者は、他の曜日に負けじと工夫を始めた。 「みんなが番組作りを楽しむようになりましたね。例えばBGMなんかも最初はおしゃれな音楽がついていたんですが、『朝はラジオ代わりにしている人も多いからなじみのある曲にしよう』という意見があり、そのうちテーマにあわせたダジャレBGMになっていました。今では視聴者の楽しみの一つになっているようでうれしいです」 気がつけば「どんな場面でもみんながボケる大喜利状態になっていた」と笑う辻だが、イキイキとボケを繰り出す出演者たちのキャスティングにもこだわりがあった。今でこそ超がつく売れっ子になったニューヨークや見取り図、ぼる塾などレギュラー芸人たちも、キャスティングを考えていた2年前には、ここまで人気者になるとは正直想像できていなかったと振り返る。