起死回生「ラヴィット!」プロデューサーが見いだした朝帯番組での戦い方
試行錯誤
辻が言う苦戦とは、すなわち視聴率のことだ。テレビは視聴率という宿痾(しゅくあ)が常に付きまとう。難題を課された辻の決断は、これまでの制作スタイルを一変することだった。 「どうにかしなくちゃいけないという気持ちはみんな共有していました。編成がバラエティーチームに話を持ってきたのも、振り切ってほしいというメッセージだったと思うんです」
番組を委ねられた辻がヒントにしたのが、自身が手がけていた番組だった。 「『坂上&指原のつぶれない店』は、情報を笑いで包んで伝えるスタイルの番組です。お得な情報を知れば、買い物が楽しくなる。そんな番組が朝からできたら、一日が愉快になるのではと思ったんです」 放送開始2カ月前に決まった番組名は「ラヴィット!(=LOVE it!)」。「日本でいちばん明るい朝番組」というキャッチコピーとともに、番組は走りだした。
前途多難
鼻息荒くスタートした「ラヴィット!」だが、最初から順風満帆とはいかなかった。圧倒的最下位からのスタートなので失うものはないと思っていたが、反発は想像以上だった。 「面白くないという意見が多かったですね。数字(視聴率)が悪いのは、面白くないからだという意見が寄せられました。内容的にも急ごしらえの部分も多く、洗練されてなかったと思います」 「やはり朝はニュースが見たいのだ」という意見も寄せられたが、それには耳を貸さなかった。帯番組、しかも生、そのうえバラエティー。「すべてが手探りなので仕方ない」という、いい意味での開き直りもあった。 「多くのバラエティー番組は収録なので、素材をそろえて、編集して、スタジオ収録に出し、出演者のリアクションを見て面白かったものをさらに編集して放送に出す。という多くの手順を踏みますが、生放送は出演者のリアクションがわからないまま放送に乗る。バラエティーでは相当怖いことです」 放送開始時はスタジオよりもVTRに力を入れていた。 「面白いVTRを作れば視聴率が上がるという経験もあったし、そもそもスタジオトークは、どういう展開になるか想像もつかないからです」 だが、開始から数カ月。視聴率は低迷し続けた。 「小さな試行錯誤を続けても改善の兆しはなかったですね。朝の視聴率はこんなに動かないんだとびっくりしました。確かに毎朝見ている番組を変えようとは思わないですよね」