フグが海なし県・滋賀の名物になる? 条例改正、除毒処理後の調理が免許なしでOKに
朝晩の冷え込みが強くなり、鍋が恋しい時期を迎えたが、「海なし県」の滋賀にはあまりなじみがない高級食材のフグが身近になっているということを、皆さんは、ご存じだろうか。令和5年3月の県条例改正で、フグ調理師の免許を持っていなくても除毒処理された「身欠(みが)きフグ」の調理・加工ができるようになった。専門店ではない料理店や居酒屋などでもフグ料理が食べられるようになったとはいえ、フグの調理が難しいのは変わりない。滋賀県喫茶飲食業生活衛生同業組合(井上良夫理事長)が大津市で11月に開催したフグの調理技術向上講習会をのぞいてみた。 【写真】完成したてっちりの材料 ■包丁入らず苦戦 身欠きフグをたわしで洗い、頭などをとる。身を3枚におろし、中骨は血抜き処理をする。その後、てっさと鍋用に調理する。身は刺し身と握りずし用に分ける。 講師は全日本ふぐ協会のふぐ調理技術マイスター認定者の星田俊輔、高山裕太両氏が務めた。 受講したのは、同組合に加盟する喫茶店、スナック、日本料理店、居酒屋などの店主、従業員計12人で、マイスターの手本を見た後、実際に包丁を握った。 「包丁にフグの身が食い込んでくる」 フグの身は繊維が多く、硬い。ほかの魚のように包丁が身に入らず、どの受講者も苦戦していた。骨も硬く、同組合が用意していた包丁では、調理できなかった。 さらに、除毒処理された身欠きフグとはいえ、初めて触る受講者には怖さがある。「やっぱり、なんとなく怖い」。実習は同組合が想定していた倍の時間がかかった。 ■「勉強になった」 令和5年3月に「滋賀県ふぐの取扱いの規制に関する条例」と同条例施行規則の一部が改正され、それまで、県内では、フグ処理者(フグ調理師)の免許がないとできなかった調理、加工が可能になった。 受講者のひとりで、日本料理「アノソラノヒガシ」(同県草津市)のオーナーシェフ、細江史人さん(48)は「フグの調理は初めてではなかったが、身が硬く、薄く切るのが難しい」と苦笑い。「条例改正で免許がなくても調理できるようになったのを知るいいきっかけになった」といい、「今まで滋賀ではフグは特別な食材だったが、徐々に珍しくなくなり、身近なものになると思う」と話した。 若手従業員が受講した日本料理店「一福庵」(同市)の店主、福栄(ふくえ)伸広さん(54)も「(従業員が)フグの扱い方を学べて、勉強になったと喜んでいた。滋賀でも免許なしで身欠きフグが扱えるようになり、フグ自体は高級なのだが、食べやすくなるだろう」と予想している。