大阪「あべのハルカス」って何?/近鉄本店が先行オープン6月13日
大阪市阿倍野区に建設中の複合施設「あべのハルカス」のうち、「あべのハルカス近鉄本店タワー館」(地下2階~地上14階)が13日、先行オープンします。来春に全面開業する「あべのハルカス」はJR天王寺駅に隣接する一等地にあり、高さ300m、地下5階・地上60階。高層ビルとしては、横浜ランドマークタワー(296m)を抜いて日本一になります。 「あべのハルカス」は、近畿日本鉄道(近鉄)グループが建設を進めてきました。レストラン、ショップ、オフィス、サテライトキャンパスが入居するほか、来春には、全面ガラス張りの展望台「ハルカス300」(58~60階)や「あべのハルカス美術館」「大阪マリオット都ホテル」も開業する予定です。地元では、阿倍野・天王寺エリアの新しいランドマークとして期待されています。
「ミナミ」の南にある地区
ところで、関西以外の方には、阿倍野や天王寺という地名はなじみが薄いかもしれません。大阪には梅田と難波という2大繁華街があり、梅田は「キタ」、難波は「ミナミ」の愛称で呼ばれています。ただし、これは方角をあらわす言葉ではありません。 たとえば、〈北〉の新大阪駅から〈南〉の梅田にタクシーで向かうとき、「キタに行って」といえば、梅田に走ってくれます。タクシーが〈北〉に向かうことはありません。〈南〉の関西国際空港から、難波に行くときも同様。「ミナミへ」といえば、〈北〉の難波に向かってくれます。では、「あべのハルカス」の阿倍野・天王寺はどの方角にあたるのでしょう?
阿倍野・天王寺は、「ミナミ」の〈南〉。難波とは2~3kmの距離です。JR・地下鉄・近鉄も乗り入れ、大阪では、梅田・難波につぐ第3のターミナルとして知られています。また、関西国際空港にJRで約30分、伊丹空港にもバスで約30分と、「空の玄関」へのアクセスにもめぐまれています。しかし「キタ」や「ミナミ」と比べると、これまで存在感は希薄でした。 難波では、2007年に「なんばパークス」が開業し、南海電鉄難波駅周辺の再開発もスタートしています。梅田でも、JR大阪駅北ヤードを中心に大規模な再開発が進められており、この4月に大型商業施設「グランフロント大阪」がオープンしたばかりです。 後塵を拝したかたちの阿倍野・天王寺ですが、近鉄百貨店の担当者は「キタやミナミに比べ、伸びしろがある」(産経新聞2012年3月26日)と、年間4500万人の来客を見こんでいます。商圏は南や東(奈良方面)にも広がっており、百貨店の増床・出店ラッシュで競争が激化している「キタ」や「ミナミ」と違って、客の奪い合いを心配する声も聞こえてきません。オフィスの引き合いも8割に達し、オフィス入居率2割にあえぐ「グランフロント大阪」とは対照的です。 「ハルカス」の名は古語の「晴るかす」(思いを晴らす、晴れ晴れとさせる)から採られました。その名のとおり、大阪南を見晴るかす、スタート時点の視界は良好のようです。