ヒグマにかじられ失った左目…命がけで対峙する北海道のハンター それでも共生の道探る“名士”
原田さんはこの20年でクマを100頭以上、シカを約6000頭駆除してきた。必要以上にとらないのが原田流で、わなの設置先にも強いこだわりがある。 「山奥には設置しない。市街地に近づいてきたクマだけをとる。無駄にとらない。山の中にいたって良いじゃないですか。これが“原田流”です」 この言葉には、彼の「共生」に対する深い思いが凝縮されている。 山奥でのクマの存在を許容し、彼らの自然な生活環境を尊重する一方で、人間の生活圏に侵入してくるクマには迅速に対応する。このバランス感覚こそが「原田流」の核心である。
若い弟子たち 「年寄りが後継者育てる それが1番の近道」
北海道猟友会によると、道内のハンター登録者数は年々減り続けて、ピーク時の1978年に比べると、2023年は4分の1の約5,400人まで減少した。60歳以上が半数近くにのぼる。 原田さんはこれまで2人にハンターとしてのノウハウを包み隠さずに教えてきた。 「もう任せられると思っています。地域を安心させてほしい。それ以上、2人に望むことはありません」
「個体調整で尊い命を奪い、動物には申し訳ないと思っている。被害や人里への出没を一気にゼロにするのは厳しい。でも減らすことはできる。年寄りが後継者を育てる。これが一番の近道」 原田さんは木漏れ日が当たる鳥獣魂碑に手をあわせる。クマと人間の共生は、まだ道半ばだ。
編集後記
全国的にクマの人身事故が相次ぐ中、「共生」をテーマに取材を模索していた際、箱わな師の原田勝男さんに出会いました。 左目を失うという過酷な経験を持ちながらも最前線に立ち続ける原田さんの姿勢には深い敬意を覚えました。原田さんの言葉には力強さと優しさがあり、「自分の方が生き延びた。すまなかったね」と畏敬の念を忘れません。 原田さんが目指すのは単なる駆除ではなく、箱わなを使ったヒグマとの持続可能な共存の道です。 北海道におけるハンターの高齢化と減少は深刻な問題です。ハンター不足が続けば、クマとの共生はますます困難になるでしょう。原田さんのようなベテラン猟師の知恵を次世代に引き継ぎ、地域全体で問題に取り組む必要があるとも感じました。 クマと人間の暮らしを守り、共存するための道は険しく、簡単には見つかりません。この記事を通じて命の重みと自然との共生について考え、私たち一人ひとりができることを見つけるきっかけとなれば幸いです。 ※この記事は北海道ニュースUHBとYahoo!ニュースとの共同連携企画です。ハンターを取り巻く状況を追い、クマとの共生の道を探りました。
北海道ニュースUHB
【関連記事】
- 熊撃ちハンター"日当8500円" 地元猟友会と交渉決裂した北海道奈井江町でヒグマ目撃…住宅から約300メートル離れた場所に親子グマか 地元猟友会とは連絡つかず
- 【ヒグマハンター"日当8500円"出動辞退】交渉は決裂!町は地元猟友会への依頼を断念…窮余の策として今後は町職員とボランティアハンターに対応を依頼へ 北海道奈井江町
- 3頭のヒグマを箱わな1つで一気に捕獲…猟友会も「一度に3頭は記憶にない」とビックリ 体長は1.1~1.3メートル 町内で目撃相次いでいた若グマか その後駆除される
- 【ビーチにヒグマ】砂浜でクマの足跡が点々と…オホーツク地方で数少ない海水浴場 約2週間の限定オープンも「6日目」で閉鎖に…”黒い物体”が動く姿を散歩中の女性が目撃
- 『体長約2メートル』のヒグマが住宅街を徘徊…付近の水産加工場のゴミを荒らす 7月に入りクマ目撃が急増