ヒグマにかじられ失った左目…命がけで対峙する北海道のハンター それでも共生の道探る“名士”
「大根かじったかのようにガリガリガリ」それでも駆除続ける“名士”
長い歴史の中で常にヒグマと対峙してきた北海道の人々。実際に被害を受けながら、いまも駆除に携わる名士がいる。 奈井江町と札幌市のほぼ中間に位置する岩見沢市で「箱わな」でクマを駆除する原田勝男さん(84)は、24年前、シカ猟の最中にクマに襲われ、頭蓋骨や腕を骨折。左目を失明した。 「こんな感じでがぶっとかじられた。これ、そのときのクマの頭蓋骨」 30代で趣味としてシカ狩りを始めた。クマに襲われた日はエゾシカ猟の解禁日で、狩り仲間とは別行動をしていたという。 「山を駆け上がる1頭のエゾシカに照準を合わせた。その瞬間、背後からガサガサと物音がした。振り向くと、わずか5メートル先に1頭のヒグマがいた」 発砲したが、クマはひるむことなく襲ってきた。「大根のようにガリガリ」と頭や口、左目をかじられた。そして、気を失った。
山林から運び出され16時間の手術…医者も驚き「生きているのは奇跡」
どれだけ時間がたったかは分からない。意識が戻ったとき、頭の皮ははがれ、骨がむき出しになっていた。耳はちぎれかけ、両目の眼球も飛び出ていた。それでも生きていた。 「無線で仲間にクマにやられた、助けてくれと伝えた。もう出血多量で寒気がしてきていた。もうだめだと思っていた」 約5時間後山林から運び出され、釧路市の病院で16時間の手術を受けた。「生きているのは奇跡」と医者に言われた原田さんの傷が完治したのは翌年の春。左目を失い、手や顔は痺れたままだった。
原田さんを襲ったクマは手負い「すまなかったと思う 人里に出ない環境をつくるべき」
原田さんを襲ったのは体重160キロの雌で、すぐそばで死んでいたという。原田さんが放った1発以外に、別のハンターが打った銃弾が何発も当たっていた。 「手負いで苦しんでいるところにたまたま俺が行ってしまった。複雑な気持ち。自分の方が生き延びた。すまなかったねとも思った」(原田さん) これを機に原田さんは「クマが人里に出ないような環境をつくるべき」と考えるようになった。
ライフル銃を置き“箱わな”へ舵切る…20年で100頭以上捕獲
ライフル銃を持ち、スコープをのぞくことも難しくなった原田さんは、箱わなへとかじを切った。 今年7月11日、岩見沢市の郊外に広がる山林にいた。4か所に設置した箱わなの見回りで、この日はヒグマの姿はなかった。前年の同じ時期は約10頭を捕獲したが、今年はまだ2頭。 「クマがかからない。これはこれでいいのです。ウロウロされると地域住民に被害を与えないか心配ですから。人命というのが一番尊い」
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