フジロックが送り出す大注目の新鋭バンド、USが語る溢れんばかりのロックンロール愛
毎年のように未知のニューアクトを発掘して日本のオーディエンスに紹介してきたフジロック。2024年の注目株として熱視線を注がれているフィンランド出身のバンドがUS(アス)だ。ハーモニカ担当メンバーを擁する編成でブルースに根差したロックンロールを聞かせる彼らは、ガレージ・パンク、パブ・ロックなどの血脈を受け継ぐ5人組。昨年のグラストンベリー・フェスに出演して注目されたのを機に、イギリスでの活動に重点を置き始めた。 【画像を見る】US、熱狂のライブ写真(全5点) 1stアルバム『Underground Renaissance』をリバティーンズのカール・バラーが所有するスタジオ、アルビオン・ルームズで録音したことも話題。平均年齢約26歳の超新星に、グループ結成から現在までの歩みを詳しく語ってもらった。オンライン取材には5人全員が出席。フロントマンのテオ・ヒルヴォネンと、彼の兄であるハーモニカ担当のパン・ヒルヴォネンがバンドの方向性を握っているように感じた。 * ─USの1stアルバム『Underground Renaissance』からは、さまざまな種類の音楽が聞こえてきて興味深かったです。アルバムのレコーディングにカール・バラーのスタジオを使ったそうですが、リバティーンズからはやはり影響を受けてますか? テオ・ヒルヴォネン(Vo,Gt):もちろん! 大好きなバンドだから、あのスタジオでレコーディングできたのは本当にファンタスティックな経験だったよ。そもそものきっかけは、僕らが彼らのクラブでプレイしたことだった。そこでカールと出会って、スタジオを使わせてもらえることになったんだ。 ─彼ら以外のイギリスのバンドでは、どの辺が好みなんでしょう。たとえばアークティック・モンキーズは好きだった? テオ:もちろん! それからザ・ビートルズ、ザ・クラッシュ、あとオアシスも好きだよ。 ─USは同じスカンジナビア半島出身のハイヴスとよく比較されてますよね。 テオ:そうだね。彼らはお隣のスウェーデン出身だから、結構よく比較されるんだ。 ─ルーツ・ミュージックに根差したアメリカのミュージシャン……たとえばジャック・ホワイトやブラック・キーズも聴いている? 全員:(口々に)もちろん! ラスムス・ルオナコスキ(Ba):彼らのアルバムは多分全部持っているよ。もう何年も聴いているんだ。 テオ:他にもトーキング・ヘッズとか、もっと上の世代のアメリカのバンドも好きだよ。ドアーズとかもね。 ─以前はグランドマザー・コーンというバンド名で活動していましたよね。バンドの音楽性はその頃からずっと一貫していて、ブルースとロックンロールが中心にあると思います。同世代の若者たちが聴いているようなEDMとかヒップホップではなく、今やっているようなルーツ志向の音楽に魅了されるようになったのは何がきっかけなんでしょう。親の影響なのか、それともYouTubeで見つけたとか? マックス・ソメルヨキ(Gt, Vo):親とYouTube、両方から影響されていると思うね。主に両親からだけど。僕はギターを弾くから自然とギター系の音楽に惹かれるし、他のメンバーもそうだと思う。 ラスムス:それから僕の場合は、新しい音楽は人工的に聞こえてしまうことが多いんだよね。自然じゃないっていうか。楽器のサウンドは生の方が美しいよ。 テオ:そうだね。思うに、僕らが普段触れているものが……スマートフォンなんかもそうだけど、デジタル処理されているものばかりだから、というのもあるんじゃないかな。今僕らがやっているような音楽には本物のギターやドラムが使われている。それが新鮮に感じられたんだ。僕らが育った世の中では多くの音楽がデジタルで作られているから、生音の音楽がとても新鮮なんだ。僕らにとっては新しいんだよ。 パン・ヒルヴォネン(Hca):僕らはティーンエイジャーの頃によくYouTubeを観ていたんだ。スライ&ザ・ファミリー・ストーンのコンサートや、ザ・バンドのコンサート、それからジミ・ヘンドリックスの映像も観た。60~70年代のクールなビデオをたくさん観たよ。 テオ:そう。で、それらがとても新鮮に感じられたんだ。それまで聴いていた曲はラジオでかかっていたものがほとんどだったけど、YouTubeを観るようになってからは、僕ら全員がこっちの方向に傾倒していったんだ。 ─あなた達がこれまでライブでカバーしてきた曲を見ると、サム&デイヴなどアメリカ南部のソウルや、スライ・ストーンのそれほど知られていない曲、ジーン・ヴィンセントのようなロックンロール、またはブルースの古典、ボブ・ディランの曲までカバーしていて、とても広く深く音楽を聴いていることがわかります。あなた達の年齢からすると驚きの深さですが、どうやってこういう古い音楽を掘り下げていったんでしょう。 テオ:レコード店だね。すごく魅力的な場所だよ。いろんなアルバムがあるのを見ると、どんな音がするのかなって興味を惹かれるけど、実際に手に入れて音を聴くまでには少し時間がかかる。その間に興味が増すんだ。図書館でも見つけていたよ。パッと手に取って「これはいいアルバムかもな」と思ったら……ジャケ買いみたいな感じで聴くことができるからね。あとはストリーミングサービスも使っているよ。 他の人たちから情報をもらうこともある。たとえばラスムスが何か聴いていいなと思ったら、他のメンバーに教えてくれるんだ。あるいはコンサートの後で人から「このバンド聞いたことある?」なんて勧められることもあるよ。 レーヴィ・ヤムサ(Dr):僕は録音された作品をフィジカルで持っているのが好きなんだ。昔のバンドの中ではレッド・ツェッペリンが好き。ジョン・ボーナムのドラミングが大好きだよ。ジョン・ボーナムは僕にとって、レッド・ツェッペリンへのゲートウェイのような存在だった。 ラスムス:そうだ、僕の父も車を運転しているときに「これがジョン・ボーナムのサウンドだぞ!」なんて教えてくれていたな。すごく鮮明に憶えている。 ─家にあった親のレコードコレクションでは、どんなものに興味を惹かれましたか? テオ:結構いろいろあるよ。僕らの父親は古いブルースのレコードをたくさん持っていたんだ。そこから受けた影響は大きかったね。 ─ハーモニカを吹くメンバーがいる編成やリズムギターの鋭さは、ドクター・フィールグッドやナイン・ビロウ・ゼロを思い出させますね。彼らやウィルコ・ジョンソンなどの作品をかなり聴いたのでは? 全員:(口々に)もちろん! テオ:そうだね、ドクター・フィールグッドの影響は大きかった。ウィルコ・ジョンソンからはギタリストとしても影響されているよ。 ─ウィルコ・ジョンソンのライブを観たり、交流したりする機会はあったんですか? テオ:フィンランドで彼のライブを観たんだ。でも会うことはできなかった……僕らがUSを始める前の話だったしね。残念ながらウィルコには会えずじまいだったけど、彼のバンドでベースを弾いていたノーマン・ワット・ロイは僕らのショウに2、3回来てくれて、対面もしたんだ。すごくいい人だし、素晴らしいベーシストだよ。