フジロックが送り出す大注目の新鋭バンド、USが語る溢れんばかりのロックンロール愛
『Underground Renaissance』とフィンランドのルーツ
─ブルースタイプの曲ばかりでなく、ポップでドリーミーなメロディも書けるのはUSの強みだと思います。メロディックな「Hop On A Cloud」からはビートルズなど60sバンドの影響も感じました。 テオ:ありがとう! そうだね、僕らは全員ビートルズが大好きだから、あの曲は間違いなく彼らから影響されている。僕らはそういう感じのコントラストがあるのが好きだから、セットリストにもアルバムにも変化を付けたいんだ。 ─ダイナミクスがあるんですね。エッジの効いた曲と、ポップでドリーミーな曲と。 テオ:そうだね、それを目指そうとしているよ。 パン:僕らがそうなったのはジミ・ヘンドリックスやスライ&ファミリー・ストーンの影響も一部ある気がするよ。彼らのアルバムも、いつもいろんなタイプの曲が入っているからね。 ─曲を録音してアルバムにまとめるときも、曲順やダイナミクス、アルバムの流れにはこだわる方ですか。 テオ:そうだと思うよ。今回は全曲を同じ日にレコーディングしたから、自然に流れができたんだ。レコーディングしながら、「そろそろメロディックなやつを録音した方がいいかな? 次はそういう曲を聴きたいと思うだろうし」なんて考えてね。また別のときは「ここらで何かもっとパワフルなものを」と考えながらやっていた。そういう意味でも、なかなかうまくいった気がする。自分自身もプレイしていて楽しくなるように、自分のためにもダイナミクスを考えるから。 ─グランドマザー・コーン時代のアルバムで、レコーディングをアナログ・テープで行なったというクレジットを見かけました。今もそういうヴィンテージ・サウンドにこだわったレコーディングをしてるんでしょうか。 テオ:今回のレコーディングはデジタルだったけど、アナログのミキシングボードを使ったりしてる。僕らはアナログでやることによってワークフローを考えついた。その場合、ほとんどすべてをライブ録音でやらなくちゃいけないんだ。断片的にではなくてね。というわけで、今もレコーディングについての考え方はアナログが基本になっているよ。 ─「Paisley Underground」という曲がありますが、これはロサンゼルスで80年代に起きたペイズリー・アンダーグラウンド・シーンに対するオマージュというより、その言葉からイメージを膨らませた理想の場所、という感じのイメージ? テオ:それは……同時にいろんなことを意味しているんだよね(笑)。と言うのも、僕らは全員ペイズリー柄のシャツを着ることが多いんだ。今もマックスが着ているよ。この曲はマンチェスターで書いた。ショウが終わった直後で、みんなペイズリー柄のシャツを着ていてさ。泊まっていたホステルのラジオからバングルスの曲が流れてきた。それで、「僕ら、まさにペイズリー・アンダーグラウンドっぽいな」と思ったんだ。ホステルも地下室みたいな構造になっていたからね(笑)。 ─フィンランドというと、日本ではハノイ・ロックスがとても有名で、それ以外のバンドについてはあまり知られていないのが実情です。あなた達はウィグワムのメンバーだったジム・ペンブロークのソロアルバムから「Just My Situation」をカバーしていますが、この曲を取り上げようと思ったポイントは? テオ:他の人の曲をカバーするときは、“僕らが表現したいことが歌詞に入っていること”が基準になる。それを素晴らしい形で表現してくれた人がいるなら、似たようなものを自分たちで真似て書くより、カバーしてしまった方がよく伝わるだろうと思ってね。もうひとつのポイントは、彼がイギリス人で、フィンランドで音楽活動をやっていたということ。僕らはフィンランド人で、イギリスで音楽をやっているから、親しみを感じたんだよね(笑)。ジム・ペンブロークの曲はどれも良いんだ。僕に言わせれば、今まで聴いてきた中でもベストのシンガー・ソングライターの部類に入るね。 パン:彼は過小評価されているような気がするな。 テオ:そうだね。それもあって選んだんだ。もしかしたら僕らのカバーが、誰かにとってジム・ペンブロークの音楽を知るきっかけになるかもしれないしね。 ─そう思います。日本のレコード店では、ウィグワムのアルバムはプログレッシヴ・ロックのコーナーに入れられがちなので、ポップミュージックを好む人にはほとんど知られていないんですよ。 パン:確かにウィグワムはプログレッシヴ・ロック色が強いバンドだったけど、ジム・ペンブロークはソロでも活躍していて、ビートルズっぽいポップな曲をやっていたんだよね。僕らはそっちの方により傾倒している気がする。ただ、僕らには彼の曲をもっとロック寄りにアレンジしたいという考えがあったんだ。 ─あなた達は自国の音楽を発掘することに対して積極的で、ダヴェ・リンドホルムが70年代に率いていた、ロックンロール・バンドやペン・リーといったグループの曲もライブでカバーしていますよね。日本ではダヴェについて知られていないので、どんなミュージシャンなのか教えてもらえますか? テオ:彼はいくつものバンドを経た人だった。バンドを作っては解散して、のサイクルが早かったんだ。だからディスコグラフィを見るといろんな名義の作品が散乱してる(笑)。 パン:最初に彼が台頭してきたときは「フィンランドのボブ・ディラン」みたいな感じだったんだ。その後ロックンロール・ガイ的に見られるようになったけどね。ファンタスティックなギタリストでもあるよ。 テオ:とても良いソングライターだし、作詞家としても優れていると思う。フィンランド語の曲もあれば英語の曲もあるけど、特に英語曲のグルーヴには大いに影響を受けたね。今ペン・リーやロックンロール・バンドの名前が出たけど、彼の音楽の何が好きって、パンキッシュなものが多いのに、同時にとてもメロディックでもあるところなんだ。そこにとても親しみを感じるよ。 ラスムス:彼がいつもリアルさを保っているところも好きだな。誰の意見にも従わなくて、自分の求めるものがはっきりしている。僕にとってはそこがすごくロックンロールなんだ。