【越境攻撃を「挑発」と形容】自国領土占領の“失態”にプーチンの不自然な言葉選び、国民より占領拡大を優先する冷徹戦略も
危機的な状況におかれる東部のウクライナ軍
ロシア国防省は9月に入り、ウクライナ東部ドネツク州の物資輸送の要衝であるポクロウシクの周辺で新たな集落を制圧したと発表した。英国防省によれば、ロシア軍はポクロウシクまで10キロメートルの距離を越えて進軍したとみられている。 この都市を奪われることは、ウクライナ軍にとり一層厳しい打撃となる。東部戦線では、ロシア軍の猛攻を受け続け、ウクライナ軍の士気の低下も著しいと指摘される。 そのような状況下で、プーチン氏が仮に一部の自国民住民が被害を受けているとしても、東部前線から軍部隊を引き離してまで、クルスク州の奪還に動く可能性は低い。東部で十分成果を上げてからクルスクを奪還しても遅くはないからだ。避難民の不満も覆い隠し、国内の反ウクライナ気運を高める結果はむしろ、プーチン氏に〝好都合〟に動いてすらいる。 政権が自国民の安全を優先しなくてもよい、ロシアという国の特異な性質を、プーチン氏は冷酷に利用し続けている。
佐藤俊介