「脱炭素と産業競争力の強化を同時に推進」「リスクを積極的に取って金融支援し、民間の呼び水に」…GX推進機構・筒井義信理事長
政府のGX(グリーントランスフォーメーション)戦略の中核機関となるGX推進機構が7月1日、業務を始めた。2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標に向けて、10年間で150兆円を超える官民投資を後押しする役割を担う。筒井義信理事長(日本生命保険会長)に話を聞いた。(聞き手・長原和磨)
非常に遠大な計画、官民連携で
――機構の役割や意義について。
「基本的な役割は、当然脱炭素。ただ、それだけでは意味がないので、産業競争力の強化を進める。この二つを同時に推進していく。そのための中核機関であり、要の組織である。
まずは金融支援。債務保証や一部出資もある。リスクを積極的に取って、民間の金融機関の呼び水にする。これが時間軸ではまず最初。
26年度からは排出権取引制度、28年には(企業が排出する二酸化炭素に価格をつける)カーボンプライシング。段階的に業務をステージアップしていく。(政府目標の)50年のカーボンニュートラルを見据えた非常に遠大な計画を官民連携で取り組む。国家課題なので、政府と連携して取り組む」
――民間だけではなかなか進まない。
「働いてきた生命保険会社では、受託者責任がある。預かっているお金に見合ったリスクの取り方を考えなければならない。どの金融機関も一緒だ。自らリスクを取り、過去に実績がないことに取り組むのは、慎重にならざるを得ない。GXは新しい技術を社会が実装すること。過去にないものを作り上げていくということ。民間金融だけでは難しいところがある。機構がリスクを積極的に取って呼び水にしたい。
リスクを取るにあたっては、具体的な金融支援の基準や制度の枠組みのようなものをしっかり作って、裏付けを整える必要がある。ある種の社会インフラを作っていく。制度の基盤を作るのに等しい仕事だと思う。
官民連携なので、機構のメンバーは、役所からの出向と民間金融で半分半分だ。民間金融で働く人はリスクの取り方がわかっているが、予見可能性を示すような役割をどう作るか。チャレンジングな課題だと思う」