SUBARU・クロストレックS:HEV、ストロングHVとe-BOXERを乗り比べてわかったこと【試乗記】
● ストロングハイブリッドが目指したのは 走破性と上質感の向上 期待のSUBARUストロングHVが、いよいよ登場した。第1弾は、一部改良してまもないクロストレックにラインアップ。ストロングHVは、プレミアムS:HEVとプレミアムS:HEV EXの2グレード構成で、価格は従来のマイルドHVのリミテッド比で約35万円高、アイサイトXやナビなどを標準で装備するEXはさらに20万円ほど高くなる。 【SUBARU・クロストレックS:HEVの写真はこちら】 ストロングハイブリッドが目指したのは、走破性と上質感の向上である。スバルならではのシンメトリカルAWD技術を継承し、ストロングハイブリッドとの組み合わせで、より緻密な制御と強力な駆動力を実現した。走破性を大幅に高めることでライバルとの差を明確にすることが狙いだ。さらに、スムーズで軽快な加速と乗り心地の向上により、1ランク上の動的質感を追求したという。 ハイブリッドシステムは、大容量モーター(119.6ps/270Nm)と、このクラスとしては大きめの2.5Lボクサーエンジン(160ps/209Nm)の組み合わせ。システムとしてはトヨタのHVと共通性が高く、動力分割機構を持つシリーズ・パラレル方式である。 スペックは超パワフル。従来の2Lエンジンを積むe-BOXERに対して、エンジンの最高出力が15ps、最大トルクは21Nm増となり、モーターにいたっては106ps/205Nmも上回っている。
車両重量は50kgの差があり、駆動用バッテリー搭載により前後重量配分はリアが重くなっている。メーカーは「重量増加分を補って余りある走行性能を実現した」と説明する。また、燃料タンク容量はe-BOXERの48Lに対し63Lに増量。約20%という燃費向上分と合わせて総航続距離は大幅に伸びている。 足回りとボディも上級グレードとしてふさわしい快適で上質な乗り心地と安心感のあるハンドリング実現を念頭に専用設計された。 具体的には、リアダンパーのロッド延長により横力時のフリクション荷重を減らし、しなやかな乗り心地を実現したほか、ボトム側にチェックバルブスプリングを追加して、スムーズな減衰とフラット感を向上させた。アームブッシュ特性を見直して、トー変化とヒステリシス(力の伝達の遅れ)を低減。操舵の手応えやライントレース性の向上を図ったのもポイントだ。 既存モデルとの視覚面の違いは少ない。外観では専用18インチホイールとオーナメント程度。EXのインテリアはアイサイトXとセットで先進感のあるフル液晶メーターが付き、専用タイプのグレー・ファブリックシートが装着される。 ストロングHVは、ラゲッジの右側にAC100V/1500Wの電源コンセントを設定。荷室はフロアが微妙に高くなり、荷室高は20mm減。容量は後席使用時で279L。既存モデルは311Lだから、数値上はけっこう違う。アンダーボックス容量も少し狭くなった。 ● スムーズでパワフルな走りを体感 オフロードの走破性は圧巻レベル。これはいい! 試乗の舞台は、富士山麓のスキー場に特設されたコース。まずは基本的な登坂性能を試した。ストロングHVなので、イグニッションオンにしてもエンジンはかからない。しずしずと、それでいてレスポンスよく走り出す。上り勾配にさしかかり、傾斜がきつくなったりアクセルを踏み増すとエンジンが始動、平坦に近づくと止まる。大容量モーター自体が強力な駆動力を発揮し、走りはリニアで力強く、しかも滑らか。しっかりと地に足がついている感覚がある。 バッテリー容量はさほど大きくはないので、勢いよく走ると坂を上っても下ってもみるみる充電量が減る。適宜エンジンがかかって充電し、その際の停止~再始動時の音や振動はよく抑えられていた。Sモードで速めのペースで走ると、エンジンはかかったままになる。