【MotoGP】ホンダの大エースはいかにドゥカティファクトリーライダーになったのか。MotoGP王者マルク・マルケス激動の4年半を振り返る
6度のMotoGP王者であるマルク・マルケス(グレシーニ)は今季、最高峰クラスで初めてファクトリーチーム以外のチームからレースを戦っている。しかしドゥカティのバイクはマルケスの才能を示すには十分な戦闘力を誇っており、7戦を終えた段階で表彰台3回。現在の獲得ポイント(136)は、昨年レプソル・ホンダで獲得した全ポイント(96)をはるかに上回っている。そして来季には、ドゥカティのファクトリーチームに加入することとなった。 MotoGP2024 第7戦イタリアGPハイライト 思い起こせば、彼のキャリアはコロナ禍の2020年から大きく動き始めた。ホンダのエースとしてMotoGPを席巻したマルケスがドゥカティのファクトリーライダーとなるまでの歩みを、ここで振り返る。 ■2020年2月20日:ホンダと4年契約を締結 2020年シーズンの開幕前、マルケスはホンダとの契約延長に合意し、2024年シーズンまでホンダの一員として戦う契約にサインした。多くのライダーがRC213Vのライディングに苦労するようになっていた中、マルケスだけは圧倒的な速さでタイトルを獲り続けていた。 2013年のデビューから7シーズンで6度のタイトルを獲得したマルケス。特に2019年のパフォーマンスは圧巻で、1レースを除いて全て1位か2位に入り、ランキング2位に150点の大差をつけた。マルケスとホンダの王朝は、終わることがないように感じられた。 ■2020年7月19日:転倒により腕を骨折。負のスパイラルへ 2020年シーズン開幕戦のスペインGPで、マルケスは首位争いを展開中にターン3で大きなハイサイドを起こして転倒。これにより右腕を骨折したマルケスはその後3度の手術を受け、シーズンを全休せざるを得なかった。2022年に4度目の手術を受けたマルケスの腕は回復に向かったが、ホンダとの関係は終焉に向かっていた。 マルケス不在の間、ホンダはマルケス以外のライダーでも競争力を発揮できるバイクの開発に舵を切ったが、これはうまくいかず、むしろ力を落としていった。ホンダは今なおもがき苦しんでいるところだ。 ■2023年10月4日:ホンダ離脱へ 勝利すらままならないシーズンが続いていた中、マルケスはその年唯一の表彰台を獲得した日本GPの直後、ホンダとの契約を1年早く終了させることを決断した。 その前にはRC213Vの2024年型プロトタイプをミサノでテストしたが、彼の熱意は高まらなかった。そこで退団を決意したマルケスは、ドゥカティ陣営のグレシーニへと移籍することになる。 ■2023年11月28日:ドゥカティで初走行 ドゥカティのゼネラルマネージャーであるジジ・ダッリーニャ曰く、マルケスのグレシーニ移籍が噂されていた当初、ドゥカティ経営陣はその話にあまり好意的ではなかったという。しかしマルケスはバレンシアでの“初乗り”でトップから0.2秒差の4番手という驚くべき走りを見せ、世界を驚かせた。翌シーズンに向けた期待は、否が応でも高まっていた。 ■2024年3月10日:ドゥカティで堅実なデビュー マルケスのドゥカティ陣営での初レースは、3年ぶりの勝利こそならなかったものの、スプリントではトップと1.8秒差の5位、決勝では3.4秒差の4位。ドゥカティへの順応には課題を残しつつも、高いポテンシャルを感じさせた。