楽しかった学校生活が一変。グループ内でのいじめのターゲットに… 『あの頃世界のすべてだった学校と自分への呪いにさよならするまで』は苦しくも勇気をもらえる1冊【書評】
家と学校の行き来する毎日は、学校生活が楽しければ全てハッピーだった。その幸せは、人間関係によってがらりと変わってしまう。学校生活が最高に楽しかった人も、苦しくて仕方がなかった人も『あの頃世界のすべてだった学校と自分への呪いにさよならするまで』(もつお/KADOKAWA)を読むと、小さな人間関係が世界のすべてだったあの頃を思い出すかもしれない。強迫神経症を発症し精神科病院に入院した日々を綴ったコミックエッセイ『高校生のわたしが精神科病院に入り自分のなかの神様とさよならするまで』(KADOKAWA)の作者が描く、かつて苦しんだ、そしていま苦しんでいる人へ贈るセミフィクションだ。 【漫画】本編を読む
みんなで買い物したりお化粧したり、憧れを描いて入学した女子校。クラスの中心的存在であるクラスメートに声をかけられ、憧れのグループに入ることができた主人公・ユイ。憧れのグループで過ごす日々に、このグループに入れて本当によかったと思う。
しかし、次第にグループ内での陰湿な無視の連鎖に怯えることになる。モヤモヤする…。なんか疲れる…。日に日に怖いという感情が支配するように。やがて無視の対象が自分に向けられて――。
無視、SNSでの悪口が続くほどに色を失っていく日常、楽しかったはずの「世界のすべて」である学校生活が、別の世界に変わってしまう様子がリアルに描かれていく。 社会人となったユイが、同窓会に参加したことをきっかけに高校時代を回顧する形で物語は進む。
「こんなこといつまでしているの」同窓会で発したユイのこの言葉は、かつて自分を傷つけた相手への言葉でありながら、自分への呪いを解くための言葉として心に響く。 自分は周りから「何をしても許される」「なめられている」そう感じているユイは、高校時代に受けた傷によっていまも我慢と諦めの中にいる。ユイと同じように「私ってこういう人間だから」そうやってどこか諦めて生きている人たちは、拒否された悲しさや孤立した怖さを経験した人が多いのではないだろうか。 いつまでもこのままの自分では嫌だ! その思いで一歩踏み出したユイの姿に勇気をもらえるだろう。