高校生、天気予測できる雲の形の組み合わせ発見 40万枚の写真分析
身近な雲の形と組み合わせを見れば、短期間の天気が予測できる――。雲推しの高校生たちの研究が、2024年度の全国高校総合文化祭の自然科学部門(地学分野)で最高賞の文部科学大臣賞に輝いた。研究に使ったのは、先輩の代から撮りためたものを含めて約40万枚に上る雲の写真データで、一枚一枚を分析する気の遠くなるような作業から結論を導いた。 「あの雲かわいい」「あれは鉤(かぎ)状雲かな」。11月中旬、福岡工業大付属城東高(福岡市東区)の校舎屋上で、科学部の雲班のメンバーらが空に浮かぶ雲をいとおしそうに見つめた。普段は昼休みを中心に、魚眼レンズを使って空や雲を撮影している。 雲の研究は元々、18年夏から、雲や空に魅了された雲班の先輩たちが始めた。当初は1日1回、昼休みの撮影のみだったが、3年ほど前から、全天撮影装置や1分ごとに空を記録する定点カメラを順次導入。22~23年には、雨を降らす予兆とされ、太陽の周りに輪がかかる「ハロ」に着目して研究するなど、自然現象の観察から天気を予測する「観天望気」に取り組んできた。 今年度は雲の形を細分化して観測し、天気との関連性を調べることにした。まず、世界気象機関(WMO)が高さや見た目で巻雲、積雲など10種に分けた「十種雲形」に該当する雲と、厚みや並び方で分類する変種などの雲を組み合わせて日々の「雲カレンダー」を作成。その後の天気の変化を記録し、気象庁の天気図などとも照らし合わせた。 その結果、積雲と放射状雲、層積雲と不透明雲などの組み合わせの場合は70%以上の高い確率で降水を観測。雲の形と組み合わせに着目することで、30分から約5時間後までの短期の天気予測が高い確率でできるとの研究成果をまとめた。 研究対象の写真は21年6月~24年3月に撮影した約40万枚。雲班のメンバー4人のうち、リーダーで唯一の3年生、野崎芙悠(ふゆ)さん(17)は「快晴の時は1時間半くらいで済むけれど、荒天の時は分析に5時間かかる時もありました」。膨大なデータを前にくじけそうになった時、心の支えになったのは、雲班の後輩をはじめ、別の研究をしながら撮影に付き合ってくれた同学年の部員、電話でやりとりした卒業生たちだった。 最高賞の受賞理由では、AI(人工知能)やプログラミングなどの先端技術を用いた研究発表が増える中、データを一つ一つ分析する姿勢が「原点に戻る研究である」などと評価されたという。野崎さんは受賞に驚きつつ「天気は局地的に変わることもあり、(今回の研究が)野外での活動の判断材料になればいい」と語る。 雲班は今後、雲の高度や風速と天気の関連性などを明らかにしていく予定。また、雲の写真と種類などの説明書きを添えた「雲カード」を作製し、地域のイベントで子供たちに配ることも計画している。雲班の2年生メンバー、刀根佳子(このみ)さん(16)は「たくさんの人に空や気象に興味を持ってほしい」と笑顔を見せた。【山崎あずさ】