選択的夫婦別姓の導入が争点に、自民総裁選で対立軸-実現は不透明
(ブルームバーグ): 自民党総裁選で「選択的夫婦別姓」制度導入の是非が争点の一つとなっている。複数の候補者が対立軸を打ち出すため、明確な立場表明をした形だが、制度化への見通しは不透明だ。
小泉進次郎元環境相が、選択的夫婦別姓を認める法案を1年以内に国会提出するとの考えを示したほか、河野太郎デジタル相も「選択肢のある社会にすべきだ」と主張。石破茂元幹事長もコンセンサスを作ることを条件に賛成姿勢を示した。
これに対し、高市早苗経済安全保障担当相は旧姓の通称使用拡大や自治体への義務付けを行うとして慎重論を展開。小林鷹之前経済安全保障担当相も同様の見解を示した。
法政大学の白鳥浩教授は、自民党内では「派閥がなくなりゼロベースでの議論」ができるようになった中で、候補者が刷新感で注目を浴びる小泉氏との違いを打ち出す必要に迫られたことが背景にあると指摘。一方で、自民党員を対象とした世論調査では小泉氏の支持に陰りが見えるなど、「法制化の明言が保守層の支持離れ」につながった可能性があるとの見方を示した。
選択的夫婦別姓は、1996年に法制審議会が導入を盛り込んだ民法の改正案要綱を答申したが、自民党内の意見がまとまらず、法案は提出すらされていない。白鳥氏は、小泉氏が主張するように党議拘束を外して議論できたとしても、自民党の現状を考えれば法案が成立しない可能性もあるとして、「選挙戦の議論が実現への道筋をつけるわけではない」との見方を示した。
経済界の後押し
労働力不足に直面する経済界は、選択的夫婦別姓の実現を求めている。経団連は6月、旧姓の通称使用で生じるトラブルが「企業にとってビジネス上のリスク」になっているとして、制度の早期実現を求める提言をとりまとめた。
総裁選後の10月1日には、経団連でダイバーシティ推進委員長を務める魚谷雅彦資生堂会長兼CEOや経済同友会副代表幹事の田代桂子大和証券グループ本社副社長らが参加し、「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるシンポジウム」を開催する予定だ。