選択的夫婦別姓の導入が争点に、自民総裁選で対立軸-実現は不透明
選択的夫婦別姓実現へ、一刻も早い法改正案提出を-経団連が初提言
慶応大学の阪井裕一郎准教授は、経団連が「夫婦別姓を認めることは経済的に大事」と示したことが、今回の議論につながったと指摘。経済がグローバル化する中で、日本だけが多様な選択肢を認めていないことへの問題意識が生まれたとしている。
多くの企業では結婚前の姓の通称使用が定着しているが、税や社会保障手続きに際し、戸籍上の姓と照合する負担が生じている。経団連の資料によると、婚姻時に夫婦同姓しか選択できない国は日本のみとされており、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)が2003年以降、3回にわたって勧告を行ったことも指摘している。
スタンフォード大学の筒井清輝教授は、日本では高度経済成長期に夫が外で働き、妻が家族の面倒を見ることで労働人口を再生産するモデルが定着し、その後、女性の社会進出が進んでもジェンダーに関する文化や制度の変化は総じて遅いと指摘。ただ、今回実現しなかったとしても、姓を選択できない状態が何十年も続くことはないだろうとの見通しを示した。
党内議論
自民党は7月18日、「選択的夫婦別姓」制度についての議論を約3年ぶりに再開した。経団連などの早期導入を求める提言を受けた形だが、会合では「伝統的家族観の維持」や「兄弟で違う姓を名乗ることの弊害」を理由に、制度導入を問題視する発言が相次ぎ、意見集約のめどはたっていない。
8月29日に行われた同作業チームの部会では座長をつとめる逢沢一郎元国会対策委員長が、総裁選の「それぞれの候補者が自らの思いや目指す方向をしっかり語ることが大事」と述べ、30年来停滞したままの問題についての議論を行うべきだとの考えを示した。
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Yuki Hagiwara, Erica Yokoyama