議員立法で救う弱者の権利 「荒野のともしび」を目指して【政界Web】
国会にしかできないこと
とはいえ、議法の強みは迅速性と柔軟性だ。 閣法は所管官庁での立案以外に審議会の協議、関係省庁との調整、内閣法制局の審査といったプロセスを経るため、提出まで時間がかかる。訴訟案件では、原告に加わらなかった被害者は司法の場だけでは救済されない。被害者の高齢化で早期成立が求められた強制不妊手術の補償法は、議連のリーダーシップで各党内の手続きを迅速に進め、判決から3カ月で成立にこぎ着けた。 夫など配偶者からのドメスティックバイオレンス(DV)を防ぐための「配偶者暴力防止法」には、一定の要件下で裁判所は被害者への接近を禁じるなどの「保護命令」を出せるとする規定が2001年の成立当初から設けられている。同法は参院の超党派女性議員が主導した議法。この問題にも取り組んだ福島氏は「当時、政府では保護命令まで入れて作れなかった。政府が踏み込めないことを議法で作ることができる」と指摘する。 「(行政や司法から)こぼれ落ちた片隅に議員立法をもって光を当てる。荒野の果てにともしびを見いだす。それこそが現代における国会の役割と言える」。衆院法制局に92年に入り、衆院憲法審査会事務局長も務めた神崎(こうざき)一郎法制企画調整部長は、議法の意義についてこう語る。 先の衆院選で与党が過半数割れし、今後は野党が提出した法案や修正案も審議される可能性が高まった。この政治状況は社会的弱者や少数者の人権保障に果たしてプラスになるのか―。不透明な政局と別に、議法の動きにぜひ注目されたい。