議員立法で救う弱者の権利 「荒野のともしび」を目指して【政界Web】
「お電話1本で対応します」
「議員立法」とは国会議員が立案、提出し、成立した法律。成立の有無にかかわらず、法案の提出など立法活動そのものも指す。 その議法を支えるのが、内閣法制局と別に衆参両院にそれぞれ設置された法制局だ。「議員の熱意をただ書き起こしても法律にはならない」(衆院法制局職員)。立法作業のプロフェッショナル集団として、政策の条文化だけでなく憲法や他の法律との整合性の調査・審査も担う。 「お電話1本いただければ対応させていただきます」。衆院の各議員事務所に配布されている「ご利用の手引」には、議法立案の依頼についてこう書かれている。 依頼を申し出るのは議員本人でなくてもよく、秘書から連絡が来る例もある。衆参の法制局は政策分野ごとに担当部署を置く。昨今話題の政治資金規正法の改正案など、同じテーマの依頼が複数の政党から舞い込むこともある。
随所に注がれるプロの目
依頼が入れば、実現したい政策に関する法制局のヒアリングから法案作りが始まる。立法の目的や内容を議員らに確認するプロセスだが、この段階について法制局関係者は「政策の具体的な内容が固まっていないケースがある」と明かす。その時は、法制局側から選択肢を示しながら一緒に考えることもあるという。 内容を詰める過程では、憲法で認められた権利を侵害しないか、既存の法律の規定と矛盾しないかどうかの確認も重要だ。時には当初の目的に立ち返りながら検討を繰り返す。 議論が煮詰まったら、いよいよ法制局は内容を条文に「翻訳」する作業に入る。議員側は法制局に起草を委ね、条文案が出てくるのを待つ。 起草された案は法制局内で内容や表現を含めてチェックする。同じテーマで複数の党がそれぞれ法案を作る際は、共同提出に向けて内容をすり合わせることもある。最終的に提出政党の党内審査などを経て国会に出される。 野党提出法案は「数の論理」で成立に至らないことが多い。今年1~6月の通常国会では衆院に32本、参院に13本の議法が出されたが、野党単独法案は一つも通らなかった。そのため、政府方針や閣法に対する対案を有権者にアピールする手段としても使われる。