パンクなふたり出版社・点滅社代表の屋良朝哉が語る"鬱"と"編集"「憂鬱で死にたくなっているくせに、憂鬱のおかげで生きられている気がするんです」
屋良 はい。もう、そんな日はしょっちゅうです。って、それで良いとは思っていないし、正当化するつもりはないんですが......。一応、うちは"ふたり出版社"なので、ぼくが動けないときは(相方の)ユウヤさんに対応をお願いすることもあります。『鬱の本』を増刷するときも、ぼくに代わってユウヤさんが印刷会社とやりとりをしてくれたんですよね。いやー、いつも本当に助けられています。 ――素人ふたりで、見切り発車で出版社を立ち上げて。今、スゴく良いペースで刊行が続いていますよね。止まらない屋良さんの姿を見ていると、自分も頑張らなきゃなと思わされます。 屋良 あ、ありがとうございます。でも、「止まらない」んじゃなくて「止まれない」んですよね。今やっておかないと死ぬかもしれないから。このまま死んだら悔いが残るでしょ、だからやるんだよって。その自分への圧が、結果的に今のペースに繋がっているだけです。 ぼくとしては、まだやりたいことの1割しか実現できていないので、もっと頑張らないとです。途中でお金が尽きたら、それこそ何もできなくなっちゃうので、売り方もちゃんと考えていかなきゃな......。 ――では改めて、いま点滅社として抱いてる夢を教えてもらえますか? 屋良 点滅社を立ち上げた段階で、作りたい本の案が20冊分ありまして。既に6冊刊行しているので、あと14冊。それを達成できるまでは、何としてでも点滅社を続けたいですね。 頭の中にいるもうひとりの自分が「お前が死ねばみんな喜ぶ」みたいなことを常に言ってくるんですよ。ただ椅子に座ってボーッとしているだけの時間も、頭の中では常にソイツとの戦いが起こっているんです。第三者からすれば、早く手を動かせよって感じだと思うんですけど......。 そのもうひとりの自分との戦いは、自分を蔑(さげす)んでばかりで何もできていなかった19歳の自分を助けることにも繋がると思っています。素人でもできたぜって証明をすることで、あの頃の自分を救ってやりたいっていうか。だから、とにかく本を作るしかないですね。結局、28歳くらいまでぷらぷら過ごしちゃったから相当しぶといけど、20冊出す頃にはコイツと和解できてるといいなーって感じです。負けたくないですね。 ――これからも応援しています! それでは最後に、屋良さんがお好きな音楽について教えてもらえますか? 屋良 えーっと、アーティストでお答えして良いですか? ずっとお話ししている大槻ケンヂさんと筋肉少女帯はもちろん、The ピーズやTHE HIGH-LOWS、神聖かまってちゃん、村八分......。あと最近はGEZANをめっちゃ聴きますね。昨年出た『あのち』ってアルバムがスゴく好きで、毎晩のようにブッ通しで聴いています。あと、ぼくはジョン・ライドンも大好きなので、セックス・ピストルズやパブリック・イメージ・リミテッドも昔から聴きまくっています。あ、あとラモーンズも......。と、この通りぼくはロックバンドが好きなんです。本当はバンドをやりたかったけど、うまくできなくて出版社に辿り着いた......みたいなところがあるので。精神性は、ロックやパンクの影響が確実にデカいですね。ハハハ。 ●点滅社(てんめつしゃ) 屋良朝哉と小室ユウヤによる「日々を静かにおもしろく照らす本を」をスローガンとするふたり出版社。昨年末に発売された『鬱の本』がヒットを記録。最新刊・鳥さんの瞼の第一歌集『死のやわらかい』、『漫画選集ザジ Vol.2』発売中。高円寺にて、(点滅社の書籍の校正などを担当した)小窓舎とともに書店「そぞろ書房」も共同運営中(住所:〒166-0003東京都杉並区高円寺南3丁目49-12 セブンハウス202号室/営業時間:水・金・土・日の14時~20時)。 公式Twitter【@tenmetsusya】 公式Instagram【@tenmetsusya】 公式note【】 取材・文/とり 撮影/まくらあさみ