木星の衛星に「地球外生命」の可能性 NASA探査機エウロパ・クリッパー、10月に打ち上げ
欧州の探査機ジュースは2031年到達
太陽電池パネルを展開した際の全幅は、バスケットコートとほぼ同じ30m。地球よりも太陽から5.2倍遠い木星の領域は太陽光が極めて弱く、それだけ大型のパネルが必要となる。 観測機器は9種を搭載。REAZON(透過レーダー)によって氷殻の厚さや構造を計測し、ECM(磁力計)で内部海の深度と塩分濃度を分析する。MASPEX(質量分析計)ではエウロパの希薄な大気を観測するが、もし内部海から吹き出すプルーム(間欠泉)のガスを補足できれば、その成分も明らかになるだろう。 ■欧州の探査機ジュースは2031年到達 じつは昨年2023年4月、もう1機の木星探査機が打ち上げられている。ESA(欧州宇宙機関)の探査機「ジュース」は木星氷衛星探査機とも呼ばれ、現在は木星への軌道に入るべく地球の近傍を航行している。 この探査機ジュースはエウロパ・クリッパーより1年半早く打ち上げられたが、木星に到着するのはエウロパ・クリッパーよりも1年3カ月遅い。これは地球と月、金星の重力アシストを利用した、低燃費な軌道を採用した結果だ。 ジュースは2031年7月に木星周回軌道に入り、エウロパやカリストをフライバイして観測。その後、2034年12月にはガニメデの周回軌道に入り、その近接観測を行う。人類の造った人工物が他惑星の衛星の周回軌道に投入されるのは、これが史上初となる。 打ち上げ時の全備質量はエウロパ・クリッパーと同等の約6トン。そのうちの約3トンを推進剤が占める。同機には10種の観測機器が搭載されているが、そこには東北大学が監修した機器も含まれている。 エウロパ・クリッパーとジュースによる探査は、遠隔的なリモートセンシングによるものなので、地球外生命の発見に直接つながるものではない。しかし、地球以外の天体に生命が生息する環境が存在するか否かという、人類永年の疑問の解明につながる探査になることは間違いない。
鈴木喜生