日銀・黒田総裁会見7月31日(全文1)現状の金融緩和の枠組みを強化
展望レポートで示された物価上昇率の見通しについて
読売新聞:ありがとうございます。2つ目お願いします。展望レポートで示された物価上昇率の見通しですが、2020年度にかけて徐々に上昇していくとのことですが、2020年度でも1.6%、政策委員の中央値ですが1.6%にとどまっています。総裁は前回展望レポートを発表された4月の記者会見で、2019年度ごろ、2%程度に高まっていくのではないかというお考えを示されましたが、現時点で2%はいつごろ達成するとお考えでしょうか。 それともう1つ物価に関連してなんですが、物価上昇率の見通しを引き下げたのでありますから、本来であれば追加の金融緩和を検討してもいいのではないかとも思います。追加の金融緩和をやらなかった理由と、どのような状況になれば追加の金融緩和を行うお考えか、その2点を伺いたいと思います。 黒田:まず展望レポートで示しましたように、わが国の物価が経済・雇用情勢の改善に比べて弱めの動きが続いていて、中長期的な予想物価上昇率の高まりも後ずれしているということで、前回の展望レポートの【政策委員 00:09:41】の見通しと若干異なり、今回、政策委員見通しの中央値では消費者物価の前年比が、見通し期間終期の2020年度でも1%台半ば、1.6%となっております。もっとも、先行き景気の拡大基調が続く中で、これまでの物価の上昇を遅らせてきた要因の多くは次第に解消していくと、そして実際の価格引き上げの動きが進むとともに、中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まっていくというふうにみております。従いまして、これまでの想定よりも時間が掛かって、見通し期間を越えることにはなりますけれども、消費者物価の前年比は2%に向けて、徐々に上昇率を高めていくということが展望できるというふうに考えております。 第2点につきましては、なんと言いましても、賃金、物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残る下では、やはりマクロ的な需給ギャップがプラスの状態を長く続けて2%に向けたモメンタムを維持するということが、2%の物価安定の目標をできるだけ早期かつ確実に実現することにつながるのではないかと考えております。この点、現状2%に向けたモメンタムはしっかりと維持されているというふうにみております。まず需給ギャップがプラスの状態が続いている下で、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化するというふうにみられておりますほか、中長期的な予想物価上昇率も実際の価格引き上げの動きが広がるにつれて徐々に高まるというふうに考えております。 こうした下で、消費者物価の前年比は想定よりは時間が掛かるものの、先ほども申し上げたように2%に向けて徐々に上昇率を高めていくというふうに考えております。また、現在のイールドカーブ・コントロールの枠組みには、名目金利が一定でも予想物価上昇率が高まれば実質金利が低下して、企業や家計の需要を刺激する効果が強まるというメカニズムも内在しているわけであります。従って、現時点では追加緩和は必要ないというふうに考えております。