日銀・黒田総裁会見7月31日(全文1)現状の金融緩和の枠組みを強化
日銀の黒田東彦総裁が、金融政策決定会合後の31日午後3時半から記者会見を行った。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは「【中継録画】日銀・黒田総裁が決定会合後に記者会見(2018年7月31日)」に対応しております。
長短金利操作付き量的・質的金融緩和の持続性を強化する措置導入の理由と狙い
読売新聞:総裁、お疲れさまです。読売新聞、【イソズミ 00:00:59】です。幹事社なんで幾つか質問させていただきます。きのうと今日の決定会合で、量的・質的金融緩和の持続性を強化する措置の導入を決められたと思いますが、その理由と狙いを総裁の口からご説明いただけますでしょうか。 黒田:本日の決定会合では、わが国において物価上昇に時間を要している背景や、今後、物価上昇率が高まるメカニズムを重点的に点検した上で、先行きの経済・物価見通しを展望レポートにして取りまとめました。またこれを踏まえ、強力な金融緩和を粘り強く続けていく観点から政策金利のフォワードガイダンスを導入することにより、物価安定の目標の実現に対するコミットメントを強めるとともに、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の持続性を強化する措置を決定しました。 具体的に申し上げますと、まずフォワードガイダンスについては2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済、物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定していることを示すこととしました。 次に長短金利操作付き量的・質的金融緩和の持続性を強化する措置について説明します。長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールに関しては短期金利、長期金利とも、基本的にこれまでの水準から変更ありません。すなわち短期金利については日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する方針を維持することを決定しました。長期金利についても10年物国債金利が0%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを行う方針を維持しました。その際、長期金利については経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうることを示すとともに、買い入れ額については国債保有残高の増加額、年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買い入れを実施するとの方針を決定しました。 なお長期金利の変動幅についてはイールドカーブ・コントロール導入後の金利変動幅、おおむねプラスマイナス0.1%の幅から、上下その倍程度に変動しうることを念頭に置いています。もっとも金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買い入れを実施する方針であり、金利水準が切り上がっていくことを想定しているものではありません。またETFおよびJ-REITの買い入れについてはこれまでの年間約6兆円、年間約900億円という保有残高の増加ペースを維持するとともに、資産価格のプレミアムへの働き掛けを適切に行う観点から、市場の状況に応じて買い入れ額が上下に変動しうるものとするとの方針を決定しました。このほか、政策金利残高を現在の水準から見直すこと、ETFについてTOPIXに連動するETFの買い入れ額を拡大することも併せて決定しました。 続いて今回の政策決定の背景となった経済・物価見通し等について展望レポートに沿ってご説明します。わが国の景気については所得から支出への前向きな循環メカニズムが働く下で緩やかに拡大していると判断しました。先行きについては、2018年度は海外経済は着実な成長を続ける下で極めて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に潜在成長率を上回る成長を続けるとみられます。2019年度から2020年度にかけては設備投資の循環的な減速や消費税率引き上げの影響を背景に成長ペースは鈍化するものの、外部にも支えられて景気の拡大基調が続くと見込まれます。 一方、消費物価の前年比はプラスで推移していますが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると弱めの動きが続いています。これに伴って中長期的な予想物価上昇率の高まりも後ずれしています。この背景には長期にわたる低成長や、デフレの経験などから賃金、物価が上がりにくいことを前提とした考え方や環境が根強く残っていることなどがあります。こうした下で企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや、家計の値上げに対する慎重な見方が明確に転換するには至っておらず、分野によっては競争激化による価格押し下げ圧力が強いと考えています。企業の生産性向上余地の大きさや、最近の技術進歩などがそれらに影響している面もあります。 もっとも日本銀行としてはマクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続く下で、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、家計も値上げ許容度が高まっていけば実際に価格引き上げの動きは広がり、中長期的には予想物価上昇率も徐々に高まるとみています。この結果、消費者物価の前年比はこれまでの想定よりは時間が掛かるものの、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。 なお、片岡委員は消費者物価の前年比について先行き2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとして、展望レポートに反対されました。以上の認識の下、日本銀行は冒頭に申し上げた各種の決定をしたところです。こうした【対応 00:07:10】は経済や金融情勢の安定を確保しつつ、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現することにつながると考えています。日本銀行は引き続き2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続します。 さらに本日決定したように、政策金利については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた、経済、物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い水準を維持することを想定しています。今後とも金融政策運営の観点から、重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため必要な政策の調整を行います。以上です。