「リスク管理下手」の日本人に大切な価値観とは 「保険仲立人」が語るリスクと挑戦のバランスシート
日本総険(本社・高松市)は、顧客の企業と保険会社の間を取り持ち、リスク管理の面から企業経営をサポートする企業です。葛石晋三専務は、日本のリスク管理は「下手」だと指摘しつつ、「いたずらにリスクを回避するだけでなく、挑戦から学ぶ姿勢が重要」 と指摘します。葛石氏に、経営におけるリスクマネジメントについて聞きました。 【動画】なぜ事業承継が大切なのか専門家に聞いた。
◆リスクテイクを認識させた父からの言葉
――日本人の場合、リスクマネジメントは「守り」というイメージが大きいように思います。 日本では、台風が来ても何もなく通り過ぎ去れば一安心といったような文化が根付いているように感じています。 「一晩、布団の中でどうやって過ごすか」という、刹那的な所に大きな力点が置かれているとしか思えないんです。 ――リスクマネジメントに関して、海外ではどのように対処しているのでしょうか? アメリカなどでは、失敗を最小限に抑えることが重要視される傾向があります。 そのため、スタートの段階では経費や損害を最大限に広げないようにすることが求められます。 たとえば、Apple がガレージで創業したように、大規模な投資を避けることでリスクを抑え、スモールな失敗に対処してきました。 ――リスクテイクを最小限に抑えることがビジネスでは大切だということですね。 ビジネスを拡大する際には、自分の能力や経済的な範囲を見極めながら進むべきだと感じています。 日本総険の創業者である父は、よく私に「片付けができる範囲を見極めながら物を広げろ」と言いました。 最初の段階でのリスクテイク量を適切に認識し、身の丈に合った行動を取ることが重要だと教えていたのではないでしょうか。 ただ、リスクを取ることは、別に悪いことではありません。 リスクが顕在化した際に備えるためのリスクマネジメントが重要です。 リスクをコントロールできない場合、自己破産や巨額の賠償金など、人生を左右する深刻な結末を迎える可能性があります。 リスクに対する重要な価値観を、もっと日本人が持ってほしいと考えています。 ――日本のリスクマネジメントへの価値観を変えるために、何が必要でしょうか? ある保険会社さんは、「挑戦の数だけ保険がある」というコピーを掲げています。 私もその通りだと思うんですが、保険は課題解決手段の一つに過ぎないということを忘れてはいけません。 企業の事業承継における人脈の承継であるとか、人材のマネジメントに関する課題は、保険だけでは解決できません。 挑戦を失敗で終わらせないため、リスクを避けるさまざまな選択肢を考える必要があります。