「高速料金」負担は誰の責任? 各トラック協会も分裂する「新深夜割引」の裏事情、物流ジャーナリストが物申す
明文化されない「未支払い対応措置」
2024年の通常国会で審議され、5月に公布された改正物流関連2法(物効法および貨物事業法)には、荷主が高速道路料金などの支払いを怠った場合の措置が記載されていない。新貨物事業法の第十条三項に、運送事業者が掲げる運送約款において、 「運賃及び料金の収受に関する事項については、国土交通省令で定める特別の事情がある場合を除き、運送の役務の対価としての運賃と運送の役務以外の役務又は特別に生ずる費用に係る料金とを区分して収受する旨が明確に定められているものであること」 と記載し、運賃と料金を区分しなければならないことが書かれているだけである。 実は、荷主が運送事業者との取引で「優越的な地位の濫用」(顧客の立場を利用して不当な取引を強要すること)を行った場合、それを是正し、荷主にペナルティーを課すための法整備は十分ではない。 例えば、運送ビジネスにおける荷主の不当行為を摘発することを目的に、2023年7月に設立された「トラックGメン」は、不当行為の程度に応じて ・働きかけ ・要請 ・勧告・公表 といった措置を取ることができる。しかし、荷主に対して課せられる最大の罰則は「勧告・公表」という社名の公表であり、営業停止や改善命令、罰金などの厳しい行政処分は存在しない。 政府は、2025年の通常国会で下請法を改正し、運送事業者に対して優越的な地位の濫用を行う荷主に対する摘発・処分の体制を強化する予定だ。しかし、2025年の通常国会で審議するとなると、改正下請法の公布は2025年で、施行は2026年になるのではないか。なんとも悠長な話だ。 現行の下請法では、荷主と運送事業者の取引は適用対象外となっている。独占禁止法では、荷主と運送事業者間の不当な取引を摘発できるが、優越的な地位の濫用を判断し、排除命令を出すには時間がかかる。 繰り返しになるが、高速道路料金の支払い拒否など、荷主が本来負担すべき料金の支払いを怠った場合、有効なペナルティーを課す方法は現行ではない。政府が発表したガイドラインでは、荷主に 「(高速道路料金などの)料金は、運賃とは別立てで支払いなさい」 と指示しているが、これを守るかどうかは荷主の ・善意 ・社会規範への順守意識 に頼るしかない状態だ。余談だが、高速道路料金に限らず、荷主が運送会社に対して行いがちな(あるいはこれまでの商慣習を振り返り、頻発していた)不当行為については、物効法で具体例を示し、罰金や行政処分などの内容を明記しておくべきだったと思う。 性善説に基づいて荷主が自発的に改善してくれることを期待するのは、もう限界だろう。