2024年4月スタートの土地の相続登記の義務化…違反者は10万円以下の過料、二次相続発生の土地は2025年3月までの登記がお勧め【相続専門税理士が解説】
不動産の相続時、所有権を移転するために不動産の登記の名義変更が必要となります。これを「相続登記」といいます。2024年4月からこの相続登記が義務化され、相続人は3年以内に相続登記が求められることになっています。もし登記がなされないと、どのような事態が生じるのでしょうか。相続登記の義務化の背景と、相続登記において重要となるポイントを見ていきます。相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説していきます。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
相続登記は「3年以内を期限に行う」義務が発生
登記簿謄本を調べても所有者の分からない「所有者不明土地」。このような土地は日本各地にあり、全国の土地の約2割にものぼるといわれています。 適切な処分ができず、不動産の取引や都市開発の妨げとなるため、重大な社会問題となっていましたが、2024年4月より相続で不動産を取得することを知ってから3年以内に、所有権移転登記を行なうことが義務化されました。また3年以内に相続登記をしなかった場合には、違反者は最高10万円の過料が命じられる可能性があります。 所有者不明土地が増えた理由は相続登記にかかる費用の問題もありますが、なにより、これまでは登記しなくても罰則がなかったことがあげられるでしょう。 相続したくない土地を相続登記せず、亡くなった方の名義のまま放置し、最後の所有者から代替わりを繰り返した結果、所有者がわからない土地ができてしまうのです。
遺産分割が成立しないなら、相続人申告登記制度を活用
しかし、土地の登記ができないのは、上記のようなケースばかりではありません。 相続時に複数の相続人が複数いる場合、遺産分割協議がまとまらずに3年以内の相続登記ができない、といったことも考えられます。 その場合は「相続人申告登記制度」を使い、「名義人に相続が開始したこと」または「自分が名義人の相続人であること」を法務局に申し出ることで、相続人の氏名と住所を所有権の記載箇所に書き加えれば、相続登記の義務は果たしたことになります。
相続登記の際に必要な書類
では、相続登記にはどのような書類が必要となるのでしょうか。 必要となる書類は、大きく「不動産に関する書類」と「戸籍に関する書類」の2つに分けられます。 ◆不動産に関する書類 まず、不動産に関する書類として、 ●固定資産税評価証明書 ●名寄帳 ●登記簿謄本 以上の3つがあげられます。 「固定資産税評価証明書」と「名寄帳」は、その不動産が東京23区にあれば都税事務所、それ以外では市町村役場の窓口で取得することができます。 「固定資産税評価証明書」は、相続登記の申請を行う年度のものが必要となるため、注意が必要です。 また、「登記簿謄本」すなわち「全部事項証明書」は、法務局で取得することができます。 ◆戸籍に関する書類 戸籍に関する書類は、遺言書がある場合と、遺言書がない場合で必要な書類が変わります。 ★遺言書がある場合 亡くなった人の死亡が分かる戸籍謄本と住民票の除票、相続する人の戸籍謄本と住民票です。 そして、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者の実印と印鑑証明書が必要となり、遺言執行者が指定されていない場合は、相続人全員の実印と印鑑証明が必要となります。 ★遺言書がない場合 まず、遺産分割協議をし、その内容をまとめた遺産分割協議書が必要です。 それから、亡くなった方の出生から死亡まで連続した戸籍謄本と住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本、相続される方の住民票、相続人全員の実印と印鑑証明書等が必要です。 可能であれば、法定相続情報証明制度を利用して「法定相続情報一覧図」の写しを提出することをおすすめします。法定相続情報一覧図があれば、相続関係を証明できるため戸籍謄本の代わりになります。