センバツ高校野球 木更津総合、接戦制す 延長十三回、粘り強く /千葉
今大会2回目のタイブレークにもつれこんだ木更津総合の初戦は2時間半の熱戦となった。第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第3日の21日、木更津総合は第1試合で山梨学院(山梨)に2―1で勝利した。関東大会準優勝校を相手にナインは最後まで粘り強く戦い、タイブレークで敗退を喫した昨夏の県大会決勝の雪辱を果たした。【長沼辰哉、隈元悠太、大原翔】 三塁側アルプススタンドはそろいのジャンパーと帽子を身につけた生徒約300人と部員の保護者らで埋まり、スクールカラーのオレンジ色に染まった。 一回裏、2番の中西が初球を左翼にはじき返して出塁。これで勢い付くと菊地の安打で中西が三塁まで進み、水野の内野ゴロで生還した。中西の母康代さん(57)は「1本目のヒットには気持ちが入っていた。新型コロナもあって練習をあまり見に行けなかった。大舞台では楽しんでやってほしい」とエールを送った。 序盤、先発の越井の母志帆さん(48)は「直球の切れがいつものピッチングじゃない」と案じていたが、越井は「スピードを抑えてコントロールを意識した」という投球で、山梨学院打線をテンポ良く打ち取っていき、スコアボートには0が並んだ。 五回表、山梨学院の榎谷の適時二塁打で同点に追いつかれると、アルプススタンドからはため息が漏れた。 九回表は渡辺が一塁側へのファウルフライをフェンスにぶつかりながら捕球、中西が盗塁を狙った走者を刺し、好守が連発した。選手たちの熱いプレーに刺激を受けたアルプススタンドでは、白いタスキを肩に掛けた野球部員の応援団長、堀江瑠人さん(2年)が「メガホンをたたいてメンバーを応援しましょう」とスタンドを盛り上げた。 タイブレークとなった延長十三回裏の木更津総合の攻撃で、山梨学院は奇策に出る。外野手1人を内野に移動させるシフトを取ると、球場内は大きくどよめいた。五島監督はバントではなくヒッティングにサインを切り替えた。打席に立った菊地は守備が薄くなった右翼方面を狙ったが、打ち上げた打球は左翼に。その間に山田が快足を生かして進塁した。続く水野は申告敬遠で出塁して満塁になると、最後は須永がボール球を見極め、押し出し四球で勝利すると、アルプススタンドは一気に湧き上がった。その後、校歌が球場内に流れると生徒たちは校名の入ったマフラータオルを左右に揺らし、喜びをかみしめた。 昨夏、木更津総合は甲子園出場のかかった県大会決勝で延長十三回タイブレークの末に専大松戸にサヨナラ満塁打を許した。ナインはその悔しさを胸に臨んだセンバツでサヨナラ勝ちを収めた。この勝利を「自信」に変えて、次戦は大会第7日の第2試合(午前11時半開始予定)で金光大阪(大阪)と対戦する。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇経験を次の勝ちへ生かす 木更津総合 越井颯一郎投手(3年) 1―1で迎えた延長十三回表、山梨学院の攻撃はタイブレークのために無死一、二塁から始まった。 1人目の打者はバントの構え。2球目、あえてバントをさせようと内角に投げ込むと、ボールは目の前に転がった。すぐさま三塁に送球して1死とした。2人目には外角低めに投げ、引っかけるようなゴロに打ち取った。これを併殺し、無失点で乗り切ると、マウンドで大きくガッツポーズした。 延長十二回が終わった時、投球数は160球を超えていた。それでも制球力が落ちなかったのは、この冬の練習のたまものだった。秋の関東大会終了後、打者を立たせて厳しいコースに投げ込む練習に打ち込んだ。五島卓道監督は「冬を経て四球がほとんどなくなった」と話す。 延長後も気合十分な投球が続いたのには、もう一つ理由があった。昨夏、継投でマウンドに上がった県大会決勝(専大松戸戦)もまたタイブレークに突入する接戦だった。甲子園の切符をあとわずかのところで逃した。共に戦った先輩たちの悔しい思いを間近で感じたからこそ、「先輩の分も勝ってやろうと気合を入れた」 甲子園の舞台で接戦を制した経験を「次にこうした場面があっても勝てるように生かしていきたい」と誓った。【長沼辰哉】