【試乗】新型シトロエンC3は革命を呼びかけるヤバいクルマ! 日本上陸前に本国でBEVの「ë-C3」に乗った!!
新型C3の本命はピュアBEV
現行の3世代目C3は全世界で560万台超、日本でも1万台を超えるメガヒットを飛ばした。4世代目へと進化するにあたり大胆なモデルチェンジを敢行した、新型C3の国際試乗会に参加してきた。 【写真】オシャレは健在! シトロエン新型C3の車内とは(全29枚) 昨今のEUロジックで、シトロエンにとってC3の完全BEV化はメニューのひとつだった。しかもステランティスグループの「スマートカー・プラットフォーム」と呼ばれる、まったく新しいプラットフォームを採用し、部品点数の削減を可能にした(=コストを抑えつつ)。さらに、シャシーの補強メンバーの合間に厚みを抑えたセルを複数入れることができ、低重心化を図った点もBEVネイティブのプラットフォームらしさだ。 とはいえ通常のFFレイアウトによるマルチパワートレイン化にも対応している。1.2リッターターボのピュアテック100馬力+6速MT仕様が用意されるほか、日本にも来年の初夏に上陸するはずのハイブリッド、MHEV+eDCT6速は年内に生産がスタートする予定だ。 後者がおそらく、前者から数kg増しのAT仕様であることを鑑みても、ベースといえるMT仕様はシンプルで滋味深い仕様だった。中低回転域が力強くて軽快、かつ小気味いいハンドリングは古典的だが、MTシフトのがっしり感とボディ剛性の高さが際立っていた。事情が許せばこちらも限定台数などで導入してほしいが、円安や型式認証といったハードルの高さは否めないだろう。 話がやや逸れたがとどのつまり、新型C3の本命はやはりピュアBEVだ。上位機種のë-C4に先んじて、より進化したプラットフォームを投入する理由は、欧州Bセグはいま、BEVの群雄割拠状態で各社が個性を競わせている状態だからだ。ルノー系はダチア・スプリング、フォードからはE-プーマ、アメリカで発売しないジープ・アヴェンジャーはEVメインのモデルで、フィアット600やコルサ・エレクトリックも控えている。 まぁ後3者はステランティスグループなのだが、ひとたび市場に出れば競合相手というのも、グループのロジックなのだ。 そこで、新型C3の切り札は「バリュー・フォー・マネー」。エントリーグレードの「YOU」と高級グレードの「MAX」というふたつのトリムがあって、本国での車両価格はそれぞれ2万3300ユーロ(約396万1000円)~と2万7800ユーロ(約472万6000円)~に設定されている。円安でそう見えないが、これは欧州ではかなり野心的な価格設定だ。 しかも、ただコスパに優れて手が届きやすいだけでなく、乗る人に価値をもたらす使い勝手とデザインに注力したという。急速充電時は100kWの充電スピードを確保し、44kWhのLFPリチウムイオンバッテリーは26分で約80%まで充電可能。そして、シトロエン最新のデザインランゲージを採用し、新ロゴ第一号採用車ともなっている。 事前に見た画像では、いかつくて複雑化したように見えたエクステリアは、実車を目の前にするといろいろと印象が変わる。「抉(えぐ)り」を多用したボディの表面処理が、筋肉マッチョに見せるより、クルマを一周するウエストラインをキレイに見せるための工夫と気づく。‘グレーディング’と呼ばれる、斜めに溝を切った各部の樹脂パネルは、見る角度を変えるたびに手前が開いて奥が閉まるような、フランス得意の「トロンプ・ルゥイユ(視覚的な騙し絵のこと)」効果で、彫琢されたボディも相まって、クルマをさらにコンパクトに見せる。 キツくなった感じのフロントマスクは、三菱デリカミニほどではないが、実物はずっとファニーな雰囲気だ。大小3本のクラスター型のLEDを組み合わせた新しいライトシグネチャーも、適度でキツ過ぎず表情を引き締める。 さらに注目すべきはボディサイズだ。全幅も全長もC3ハッチバックから5~20mmほど大きいだけで、小まわりの感覚はほぼ変わらない。ただし、車高は1577mm(ルーフレール含む)と100mm近くC3ハッチバックより高くなり、室内の余裕感も当然、ワンランク上がっている。 BEVゆえバッテリーで重心が低くできる以上、ルーフを高くして視界も室内の広さもアゲアゲで行こう、という方向性だったとか。いわばSUVルックは結果としてそうなっただけで、目的だった訳ではないのだ。