なぜイングランド女子サッカーは観客が増えているのか? スタジアム、ファン、グルメ…フットボール熱の舞台裏
サポーターの熱が伝播するスタジアム
筆者が取材したのは、10月3周目のWSL第5節。清家貴子が所属するブライトンは、男子チームの本拠地であるファルマースタジアム(通称アメックススタジアム)が会場となった。集客力のあるマンチェスター・ユナイテッドとの上位対決ということもあってか、チケットは完売し、同スタジアムのWSL記録となる8369人が入った。 サポーターは4割以上が女性だ。花火の演出に合わせて、スタンドのボルテージが上がり始めた。 「ブライトンはサポーターの集団は多くないけど、個々がみんな熱くて、自然とスタジアムが一つになっていく感じです」 清家が話していた通り、人々はピッチで繰り広げられるパフォーマンスに一喜一憂し、チャンスシーンでは立ち上がって叫ぶファンもいた。 一方、ジョイスタジアムで行われたマンチェスター・シティ対アストン・ヴィラの試合は、3528人の観客が入った。メインスタンドとバックスタンドはほぼ満員で、サポーターの熱が充満していた。 個人的に、女子サッカーを見るスタジアムとして、ジョイスタジアムは理想的な環境に思えた。最前列のスタンドからピッチまでは約2メートル。ピッチ上の選手の息遣いまでが聞こえる距離で、臨場感は抜群だ。仕切りが少なくて導線がわかりやすく、初めてスタジアムに来た人にも優しい造りだ。日本だと、WEリーグの日テレ・東京ヴェルディベレーザの本拠地である味の素フィールド西が丘に近い。 また、試合前の練習はピッチ脇から撮影することができ、中学生や高校生ぐらいの女の子たちが熱心に一眼レフを構えていた。ファン層は、10代~20代の女の子たちの多さが目についた。 シティの中盤で司令塔を担う長谷川唯は、「このグラウンドで試合をするときは、相手がチェルシーやアーセナルなどの強豪でも基本的にシティがボールを持てるし、ホームのアドバンテージを感じます」と話していた。 それもそのはず。相手へのブーイングが容赦なく、ゴール裏もバックスタンドも、応援の熱量が変わらない。10年ほど前に、6万人ぐらいが入ったプレミアリーグのスタンドで見た光景を思い出した。 マンチェスターはロンドンに次ぐ第2の都市で、シティとユナイテッドの二大ビッグクラブが鎬を削る。人々のフットボール熱は、街の至るところに渦巻いていた。