イラン包囲網にトランプ外遊 突然ではない? サウジのカタール断交
米軍司令部が置かれてきたカタール
トランプ政権誕生によって、アメリカとサウジアラビアの関係には改善の兆しが見え始めた。しかし、アメリカとの関係改善によって中東地域におけるプレゼンス強化の後ろ盾を得たと考えたサウジアラビアが、これまで目の上のタンコブ的存在であったカタールに強硬姿勢で臨むようになったことは想像に難くない。 しかし、カタールはアメリカの中東戦略の拠点ともいえる場所で、首都ドーハの南東にある軍事基地には現在も1万1000人以上の米軍部隊が駐留している。最近ではイラクとシリアにおけるイスラム国の拠点を空爆した際に、B-52爆撃機がカタールから出撃している。また、アフガニスタンに対する軍事作戦や2003年のイラク戦争でも、カタールは米軍の司令部として使われてきた。アメリカにとってはカタールもサウジアラビアも、中東地域における重要な同盟国であることに変わりはない。カタールがアラブ諸国内で孤立する傾向は、アメリカにとっても外交上大きな問題だ。 サウジアラビアやエジプト、UAEは「テロ支援国」としてカタールを非難して断交に踏み切ったが、第3国が関係修復に向けて動き出しているという情報もある。トルコとクウェートだ。それぞれ、異なるスタンスで関係修復の仲介役をつとめようとしているが、トルコのエルドアン大統領は6日、「トルコはこれからもカタールとの良好な関係を維持していく。最も困難な時期に我々をサポートしてくれた国だからだ」と演説で語った。カタールは昨年トルコで発生したクーデター未遂でエルドアン政権支持を表明していた。サウジアラビアを含む他のアラブ諸国とも比較的良好な関係を維持するトルコのエルドアン政権が、カタールの孤立を防ぐ仲介役となる可能性が高まってきた。
------------------------------ ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト