イラン包囲網にトランプ外遊 突然ではない? サウジのカタール断交
サウジアラビアやエジプトなどのアラブ諸国は5日、カタールとの国交断絶を発表した。カタールとサウジアラビアは1981年に設立された湾岸協力会議(GCC)の加盟国で、2011年に「アラブの春」の影響を受けてバーレーンで反王制デモが発生した際には、GCC加盟国としてカタールもバーレーンに治安部隊を派遣している。しかし、2013年からカタールと他のGCC加盟国との関係が悪化。2014年にはサウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)の3か国が、内政干渉に対する報復措置として、駐カタール大使を召還する騒動も発生している。中東地域では以前からサウジアラビアとイランの対立が深まっており、両国は昨年1月に断交している。先月23日にカタールの国営メディアは、同国のタミム首長が「イランとの関係を深めることに何の問題もない」と発言したと報じ、この発言がアラブ諸国でイラン包囲網を強固なものにしたいサウジアラビアを激怒させたという見方も存在する。 【図解】激動の中東情勢 複雑に絡み合う対立の構図を整理する
発端はサイバー攻撃によるフェイクニュース?
アラブ諸国内で大きな影響力を持つ、サウジアラビア、エジプト、バーレーン、UAEは5日にカタールとの断交を発表し、それに続く形で昨年樹立されたイエメンの「救国政府」、モルジブ、リビア東部を拠点とする勢力もカタールとの国交断絶に踏み切った。中東における地域協力機構の湾岸協力会議(サウジアラビアやUAEなど6か国で構成)の加盟国でもあるカタールは長きにわたって中立的なポジションを自任し、中東地域の紛争や政治的対立の解決に関与する仲介者的役割を果たしてきた。しかし、サウジアラビアやエジプトは、カタールがイスラム組織「ムスリム同胞団」を支援し、結果的にテロを資金面で援助していると非難。さらに1995年の無血クーデター後にカタールがイランとも良好な関係を築こうとしてきたことに対し、イランとは犬猿の仲であるサウジアラビアが不信感を抱いていた。 断交にいたる決定的な一打となったのが、先月23日に国営カタール通信が伝えた、「カタールのタミム首長はイラン政府を支持する」という内容の記事であった。カタール政府は国営通信社の報道の内容を否定し、サイバー攻撃によってニュースの書き換えが行われた可能性を示唆した。CNNは7日、カタールの通信社がロシアからのサイバー攻撃による被害を受けた可能性があり、すでにアメリカの捜査当局がカタールに職員を派遣したと伝えた。実際にサイバー攻撃が存在したのか、またロシア政府が何らかの形でサイバー攻撃に関与したのかについては何も確定していないが、昨年から欧米で問題となっている「フェイクニュース」を何者かが国営通信社から発信した疑いも浮上している。