「オレは走り終わった後、死ぬ気だから」青学大“遅れてきた大エース”鶴川正也の執念…箱根駅伝は「5区でも6区でも良い」原晋監督も「今日はダブルA評価」
「走り終わった後、死のうと思っているから」
個人としての記録よりも、チームにとっての力になりたい。その思いは、行動になって現れる。 レース前日、それぞれの宿舎に選手たちが向かう際、鶴川は全員を呼び止め、こう声をかけたという。 「もうオレは死ぬ気で走るから。走り終わった後、死のうと思っているから。それくらい、お前らも死ぬ気で走ってきてくれ」 今回の走りはまさに、その言葉を体現するものだった。 残り1kmを切ってからの、吉田響との壮絶なたたき合い。抜きつ抜かれつの死闘は、襷渡しの直前まで続いた。1秒先んじて襷をつないだ鶴川は、その場に倒れ込んで胸を上下に波打たせた。心臓が悲鳴を上げるような荒い息づかいを、テレビの集音マイクが拾っている。 熱い思いは、後続の選手の闘志に火をつけたことだろう。 3区の折田壮太(1年)がトップをキープし、4区の黒田朝日(3年)が区間新の快走で後続との差をさらに広げた。4区終了時点で3位の國學院大とは1分27秒差、5位の駒澤大には2分25秒の大差をつけた。 原監督は「鶴川と黒田のところで勝ち筋が見えた。今日の鶴川にはダブルAの評価をあげていいんじゃないですか」と話していたが、エースの一人として及第点以上の走りだった。 レース後、監督の好評価を伝えると、鶴川は意外にも表情をほとんど変えなかった。 「良い走りは個人的にはできたと思いますけど、やっぱり優勝しないと区間賞を取っても嬉しくないですね。僕が抜け出して、朝日で突き放して、そこまではいつもの無双状態に入った青学の流れだったので……。このまま行くかなと思ったんですけど、そう甘くなかった。僕たちが弱かったです」 青学大は2区から7区まで1位をキープしていたが、最終8区で國學院大と駒澤大に抜かれ、3位に転落。出雲に続き、またしても悔しさを噛みしめる結果となった。 区間賞の活躍も手放しで喜べないのは、根底にこんな思いがあるからだ。 「僕はまだ何も返せていないので。やっぱり優勝しないと、今までの3年間は取り返せない。ほんと優勝したいですね」 前回の箱根でチームは2年振りの総合優勝を果たしたが、テレビ越しに味わった優勝を、鶴川は心の底から喜べなかった。最終学年で迎える箱根は、最初にして最後の出場のチャンスだ。自らの活躍で連覇をたぐり寄せるために、鶴川は何でもする覚悟だという。
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