列島分割論のススメ 陰鬱な小休止の「平成」を抜け出すために
官僚・大企業・IT・ゲーム・アイドル
日本国内の社会体制における大きな変化は官僚と大企業の力の衰退ではないか。 かつて日本は、政治家がダメでも官僚はしっかりしているといわれた。池田勇人や佐藤栄作といった成長期の総理は元官僚であった。堺屋太一は大阪万博で活躍し、城山三郎は『官僚たちの夏』という小説を書いた。 しかし今は、官僚のもっとも得意とするはずの文書管理で失態が続き、忖度と無為無策が横行している。小選挙区制と内閣人事局の結果であるという人も多いが、政治主導はマスコミが煽ったことでもある。こういった官僚の衰退は、成長期に日本経済の屋台骨を支えた財閥系大企業の衰退とも軌を一にする。つまり経済の基底となる文化が変わったのだ。 昭和の末、日本の工業技術は世界に冠たるものであった。コンピューターもメインフレームの時代は、王者IBMを、日立、東芝、富士通、ソニーなどが追いかけていた。しかしパソコンの時代になると様子が変わった。マイクロソフトとアップルという、どちらかといえばソフトに重点を置くアメリカの若い企業が覇権を握り、日本の電機メーカーは遅れをとった。また平成はインターネットの時代でもあった。アメリカからはGAFAと呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなどが、瞬く間に世界企業となったが、日本からそういう企業は現れなかった。そしてファーウェイの事件から、5Gと呼ばれる第五世代移動通信システムの主導権をめぐる米中の角逐が話題になっている。 若い人たちの娯楽として、コンピューターゲームとアイドルグループの時代でもあった。昭和の娯楽が、伝統的な演芸演劇から、映画、テレビ、マンガ、アニメと変化してきたことに続く現象だ。全体的に、リアリズムの時代からファンタジーの時代へと動いているように思える。 つまり国の外も内も、政治も経済も文化も、大きく変わった。それでも総合的に見て、昭和の激動に比べれば、平成は平静な時代ではあったろう。