列島分割論のススメ 陰鬱な小休止の「平成」を抜け出すために
国内政治の歩み
とはいえ、平成時代の国内政治にはそれなりの変化があった。 いわゆる55年体制の崩壊があり、非自民連立の細川政権が誕生した。このころ一連の政治をリードしたのは自民党においても非自民においても小沢一郎であり、平成前半の政治は彼が動かしたといえる。政権交代への意志が強い、行動力ある政治家だが、日本の家社会的な政界にはアレルギーがあったようだ。その結果、この政権は短命で自社さ政権から再び自民党中心の政権に戻った。そしてそれまでの中選挙区制に代わり小選挙区比例代表並立制となる。小泉政権では郵政民営化という改革が行われ、市場原理主義的な政策によって経済はそれなりの盛り上がりを見せたが、リーマンショックによって再び落ち込んだ。 やがて消えた年金記録問題による官僚不信などから、民主党に政権が移る。つまり平成期には非自民への政権交代が二回あったのだが、社会は好転せず、むしろ混乱により悪化したと思われている。 そして安倍政権だ。平成時代の内閣は小泉政権を除けば総じて短命であったが、安倍政権は長期政権となって現在も続いている。右寄りとされるが、媒体(新聞、雑誌、テレビ)によって評価が分かれるのがこの政権の特徴で、特に安全保障政策は、賛否が激しくきしんでいる。経済は表面的には盛り上がったものの財政赤字は積み上がっている。外交は活発化し、ある程度評価されている。
自然災害と近隣関係
阪神淡路大震災と東日本大震災という二つの大震災をはじめとする各地の自然災害も、平成という時代を特徴づけている。その被災地を天皇皇后両陛下が頻繁に訪れ、被災者の前にひざまずいて元気づけられたことは国民の記憶に残るだろう。またオウム真理教事件は、自然災害ではないが、それに似た印象の、普通の若者の心が洗脳によって人間の道を逸脱するという、驚くべき事件であった。近年報道される詐欺事件にも、少し似た洗脳的印象がある。 近隣関係の悪化もこの30年の大きな変化だ。中国との関係はもっぱら尖閣という領土の問題であり、韓国との関係はさまざまな問題が感情的に重なっていて、性格が異なるが、どちらも経済的に日本の援助を必要としなくなったことは共通している。この急速な関係悪化は、日本人に自然災害にも似た印象を与えているのではないか。 海外を歩いて感じるのは、ホテルのテレビが、ソニーとパナソニックからサムスンに代わり、他の電気製品あるいは自動車にも、日本以外の東アジア製品が増えたことである。つまり平成時代、情報技術ではアメリカに水をあけられ、ものづくりでは中国、韓国、台湾などにキャッチアップされた。