列島分割論のススメ 陰鬱な小休止の「平成」を抜け出すために
「近代的激動」の陰鬱な小休止
考えてみれば江戸末期以来、日本は激動の中にあった。 黒船騒動、尊王攘夷、明治維新、廃藩置県、西南戦争、自由民権、日清戦争、産業革命、日露戦争、第1次世界大戦、モダン文化、世界恐慌、関東大震災、そして前述の昭和激動へと続く。 どの国にも「近代的激動」というものがあるようだ。 欧米は18世紀末~20世紀前半、日本は19世紀後半~20世紀、新興国は20世紀後半~21世紀であろうか。もちろん国によるのだが、戦争、革命、独立が相次ぎ、急速な経済成長と大不況があった。そう考えれば「平成」という時代は、日本の「近代的激動」が小休止した感がある。それもやや衰退気味の陰鬱な小休止である。
列島分割試論
令和という時代はどうなるだろうか。 「若者に夢がない」。よく聞かれる言葉だ。 たしかに、安定志向で、楽しく生きられればそれでいいという若者が多いように思える。将来に、希望よりも不安の方が大きい。 そう考えれば、この陰鬱な小休止はしばらく続くかもしれない。 しかし激動の予感がないわけではない。悪い予感のほうが多い。出しつづける赤字国債の信用が失われることによる経済的破局の可能性。対外軍事衝突の可能性は低いが近づいているようにも思える。内戦的な混乱は一番なさそうだ。他国と比べて日本の治安は悪くないが、これから増えてくる外国人労働者を心配する声もある。 希望的な激動の可能性はあるだろうか。 「近代的激動」のエネルギーが鎮火したとすれば、そして近代とは激動しなければ置いていかれる時代だとすれば、原点に返ることによって再び点火することが可能かもしれない。原点といえば明治維新である。思い切った中央集権化によって近代的激動の軌道に乗せた。現在はその社会制度が錆びついて賞味期限が切れたように感じる。 ならば今度は、社会制度をもう一度分割したらどうか。列島分割論である。道州制というような生易しいものではなく連邦制とでもいうべきもので、国鉄を分割してJRにしたようなものだ。社会保障も税制も公共事業も、それぞれ経営形態を変えて、結果のいいところにならう。もちろん分裂ではなく分割であるから、必要なところは連邦政府で行う。 外国を見ても、フランスは集権的であるが、イギリスもドイツもアメリカも連邦的な制度である。その方が状況変化に柔軟に対処できるのかもしれない。中央政府は再び鎌倉幕府や江戸幕府のような立場になる。そして必要であれば再び統合する。必要なのは新しい制度を加えることではなく、錆びついた制度を洗い流すことである。 あくまで試論であるが、明治の中央集権化が近代的激動の跳躍に効果的だったように、列島の行政分割化が小休止からの再興に効果的であるかもしれないのだ。 荒唐無稽な夢に聞こえるが、何もしなければジリ貧が見えている。明治維新も夢のような構想から始まったのに違いない。