『海のはじまり』第9話 ずっと「選択」を避けてきた夏の決断、あまりにも悲しい弥生との別れ
Snow Manの目黒蓮が主演を務めるTVドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)の第9話が、9月2日に放送された。 【関連写真】ドラマ『海のはじまり』より夏(目黒蓮)&海(泉谷星奈) 今回のエピソードは、夏(目黒蓮)と弥生(有村架純)の出会いから始まる。夏は印刷会社の営業マンとして、化粧品メーカーの開発部で働く弥生のオフィスを訪ね、その後も何度か仕事で顔を合わせることになる。引っ込み思案な性格の夏に、開発部の同僚たちは「もったいない。見た目はいいのに、しゃべるとパッとしない」「曖昧な返事されると不安になる」と厳しい評価を下すが、弥生は「驕らず謙虚。何より優しい」と好印象。ほどなくして、二人は交際することになる。(以下、ドラマのネタバレを含みます) 「夏と弥生のはじまり」をプロローグに持ってきたのは、「夏と弥生のおわり」(あくまで恋人同士、という意味だが)を描くにあたって必要な手続きだと、作り手が確信していたからだろう。今回のエピソードでは、二人の悲しい別れが描かれる。最初は弥生も、夏と一緒になって、海(泉谷星奈)の母親になることを望んでいた。だが次第に、今はもうこの世にいない水季(古川琴音)に嫉妬を感じるようになり、寂寥感と孤独感を募らせていく。 彼女が別れを決心したのは、水季から弥生に宛てられた手紙だった。「他人に優しくなりすぎず、物分かりのいい人間を演じず、ちょっとズルをしてでも、自分で決めてください。どちらを選択しても、それはあなたの幸せのためです」。そこに書かれていたのは、かつて弥生自身がクリニックの「ご意見ノート」に綴った文章だった(第6話)。中絶を選択した彼女の率直な想いが、今度は水季を通じて、自分の元に戻ってきたのである。
「海ちゃんを選ぶ」という決断
弥生の苦渋の決断を告白された夏は、「3人が無理なら、どちらか選ばなきゃいけないなら、海ちゃんを選ぶ」と声を震わせながら答える。正直、「海ちゃんを選ぶ」という強めのワードの選択には、肝心なところで相手に配慮ができない夏に苛立ちも感じてしまう。いやマジで、そういうところだぞ、夏! だが思えばこのドラマは、「選択」の物語だった。自分の意思で「選択」することを避けてきた主人公が、今回ははっきりと「選ぶ」という言葉を口にしたのだ。誰よりもまず相手のことを第一に考えて、どっちつかずの言動に終始していた夏が、「海ちゃんを選ぶ」という発言をしたこと自体、『海のはじまり』という物語がゆっくりと時間をかけて辿り着いた、ひとつの帰結なのだ。 ふだんはback numberの「新しい恋人達に」が流れるなかでエンディングを迎えていたが、今回の第9話では得田真裕による美しいスコアで幕を閉じる。それもまた、夏の成長を表す演出的な意図なのかもしれない。「夏と弥生のおわり」が描かれることで、「海のはじまり」が近づいている。
竹島 ルイ