タンタンとひまわりと約束…「奇跡のパンダ」タンタンの驚きのパン生を辿る
大輪のひまわり
このモザイク写真に描かれているのは、神戸市にある王子動物園で暮らし、長年多くの人々に愛されたパンダのタンタン。今年3月に亡くなったタンタンを偲び、100人近い有志が写真を持ち寄って作成した。 【写真】パンダのタンタン、あの夏のひまわり よく見ると、小さな写真一枚一枚にはすべて、大輪のひまわりが写っている。 実はこのひまわりは“タンタンのひまわり”と呼ばれ、全国のタンタンファンの元で大切に育てられてきた。 タンタンとひまわりの間に、いったい何の関係があるのか?そしてなぜ、“タンタンのひまわり”と呼ばれ、その種が受け継がれているのか? 2020年から5回にわたって放送したNHKのドキュメンタリー「ごろごろパンダ日記」をもとに、タンタンのドラマチックなパン生と、今なお多くの人たちの心を掴む魅力に迫っていく。 (全3回/第3回) 阪神・淡路大震災で傷ついた人たちを癒す復興のシンボルとして、2000年に中国から来日したタンタン。小さな体に短い手足。コロンとしていてまるでぬいぐるみのようなかわいさから“神戸のお嬢さま”と呼ばれ、たちまち人気者になった。 しかし、その後のタンタンのパン生は決して平たんと呼べるものではなかった。2008年に赤ちゃんを、2010年にはパートナーのコウコウを亡くし、タンタンは動物園に一頭だけ残された。この状況に、タンタンの飼育を担当していた梅元良次と吉田憲一は、自分たち飼育員が変わることを決意。ハズバンダリートレーニングと呼ばれる、動物に協力してもらいながら行う健康管理法に、タンタンとともに取り組みはじめた。(第2回:パンダの命を預かるために「自分たちが変わらなければ…」動物園の飼育員さんの決意と苦節10年にわたる特訓の日々)
タンタンを襲った“不治の病”
タンタンと二人の飼育員の暮らしが一変したのは2021年1月のこと。定期健診でそれまで一度も見られなかった異常が見つかったのだ。 獣医師が聴診器を当てたところ、タンタンの心臓からいつもと違う音が聞こえてきた。普段ならドクン、ドクン、ドクンと一定のリズムで音がするのに、この日はドドド………ドド…ドドドと弱弱しい音しか聞こえず、リズムも速く、乱れている。詳しい検査を行ったところ、タンタンは加齢など高齢からくる心臓の疾患を抱えていることが判明した。 パンダの心臓疾患は生前に見つかることが稀で、その治療法はパンダ研究の先進国・中国でも確立されていない。いわば“不治の病”に直面した王子動物園では、病気の進行を食い止めるため、心臓の収縮を助ける強心薬や血液の通りをよくする血管拡張薬などを服用させることに決めた。