誤情報が拡散するレプリコンワクチン 有効性と安全性は確認されていても、なぜ専門家が「現時点では選択する理由がない」と話すのか
「まず、接種者の体内で抗体が作られる時間が長続きする点が果たしていいことなのかは、まだ判断できません。 逆に抗体が長持ちすることで心筋炎のような自己抗体性の副作用のリスクが高まるといった可能性もあります。 そう考えると、すでに世界中で数億人が接種し、副反応に関する大量のデータも蓄積されているモデルナやファイザーのワクチンと比べて、市場に出てから間がないこのワクチンがベターだと考える根拠は乏しい。 これは、ワクチンに限らず、すべての医薬品についていえることですが、新薬によほど明確なアドバンテージがない限り、使用実績が多くて副作用リスクのデータも十分にある従来の医薬品を優先して使うのが合理的だと思います」 また、今の状況ですでに3回以上コロナワクチンを接種している人が、今後も定期的に追加接種を受ける意味があるのか? ワクチン接種や実際のコロナ感染による重症化予防効果が、どの程度、長続きするのかについても明確な答えは出ていないという。 「根拠のないシェディング説やそれによる差別は論外ですが、今後は『ワクチンは是か非か』『敵か味方か』といった単純な二項対立にのみ込まれるのではなく、ひとりひとりが冷静にファクトと向き合い、自分で考える姿勢が求められているのだと思います」 ●岩田健太郎 Kentaro IWATA 1971生まれ。神戸大学医学部付属病院感染症内科教授。2001年の炭疽菌テロの際はニューヨークで、03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)感染拡大時は北京で診療に当たり、14年にはアフリカ・シエラレオネでエボラ出血熱対策に携わった感染症のスペシャリスト。著書に『僕が「PCR」原理主義に反対する理由』など 取材・文/川喜田 研 写真/時事通信社 共同通信社