誤情報が拡散するレプリコンワクチン 有効性と安全性は確認されていても、なぜ専門家が「現時点では選択する理由がない」と話すのか
「今年8月、『新型コロナウイルス感染症予防接種に導入されるレプリコンワクチンへの懸念 自分と周りの人々のために』という緊急声明を発表して話題になった『日本看護倫理学会』という団体の主張などがまさにそれです。 しかし、先に結論から言うと、そんなことはありえません。 まず、すでに述べたようにmRNAワクチンが体内で作り出すのは感染性を持ったウイルスそのものではなく、スパイクタンパク質だけ。レプリコンワクチンの場合、mRNAが一定期間、体内で自己増幅するのは事実ですが、これもスパイクタンパク質の遺伝子だけですから、それがウイルスそのものにならない限り、細胞の外に飛び出して感染性を持つことはできません。高校レベルの生物の知識があれば、誰でもわかるはずのことです」 岩田教授は、こうしたシェディング説のような誤情報の拡散が「差別などの深刻な人権侵害を引き起こす」ことを懸念する。 「これって日常生活ではほぼ感染のリスクがないのに、長年ハンセン病患者を不当に隔離していたのと同じ話で、『日本看護倫理学会』と、仮にも名称に『倫理』という言葉を掲げている団体が、ファクトに基づかない情報の拡散で差別を助長するというのは、絶対にあってはならないことだと思います」 ■正直、これまでのワクチンで十分 ただし、そんな岩田教授もレプリコンワクチンの接種は積極的に勧めないという。 「あくまでも個人的な意見ですが、僕は待ったほうがいいと思います。 もちろん、シェディングが起きるとか、人間の染色体に変異を起こすといった主張は荒唐無稽な主張ですし、レプリコンワクチンも第3相試験という臨床試験で有効性と安全性は確認されています。 また、このワクチンが日本でしか承認されていないことを問題視している人もいますが、それはアメリカなどほかの国で『承認を却下された』という意味ではなく『まだ承認されていない』ということ。それでいうと国産のコロナ治療薬として広く使われているゾコーバもほぼ日本でしか承認されていません。 私がレプリコンワクチンの接種を積極的に勧めない理由は簡単で、少なくとも現時点では、既存のワクチンに代えてレプリコンワクチンを選択する理由がないからです」 というと?