NBAデビューの河村勇輝に恩師が喜び 「現状に満足せず、成長しようとする」 妥協しない姿勢導いたイチロー氏の言葉
米プロバスケットボールNBA、グリズリーズの河村勇輝(23)が25日(日本時間26日)、ロケッツ戦で日本選手として4人目のNBAデビューを果たした。第4クオーター終盤に約3分間のプレーだったが、1アシストをマーク。ネット観戦した母校福岡第一高の井手口孝監督(61)は「ついに来た。すごいこと」と驚きと喜びを口にした。 ■その差55センチ…富樫勇樹vsウェンバンヤマが話題【写真】 井手口監督は20日早朝に河村本人から電話があり、ツーウエー契約締結の報告を受けた。「淡々と、スタートラインに立ったばかりだから、という言い方だった」。夢舞台の第一歩を踏みながらも浮かれないように「常に現状に満足せず、成長しようとするのが彼らしい」と感心した。 山口県出身で6歳から競技を始めた河村は日本人初のNBAプレーヤーで、現在Bリーグ1部(B1)宇都宮でプレーする田臥勇太の映像集を見て憧れた。「足は速くないけど、緩急を使い分けてドリブルを速く感じさせていた。僕も足は速くないので、こういうふうにやればいいと気付いた」。山口・柳井中で160センチ台ながらスピード感あるドリブルで身長のハンディをものともせず、井手口監督の目に留まって誘われた。 福岡第一高では1年時からガードとしてスタメンで活躍しながら、全国高校選手権(ウインターカップ)準決勝で福岡大大濠に惜敗。「3点シュートを1本も決められなかった」と悔やんだ。2部練習と夕食後、同級生の小川麻斗(現千葉J)と競うように、試合で外した位置からのシュートを約1時間練習。2、3年時のウインターカップは自身も得点を重ね、連覇の立役者となった。 高校時代から炭酸飲料を飲まないなどストイックだった河村。突き動かしてきたのが、プロ野球で日米通算4367安打を放つなど活躍したイチロー氏の「妥協はたくさんしてきた。自分に負けたこともいっぱいある。ただ、野球に関してはそれがない」という言葉だ。バスケ界では小柄な173センチだが「自分も妥協せずにやれば、ああいうふうになれるのかな」と励みになった。 高校卒業前に渡米を勧められるなど、周囲の評価が高まっても浮かれず「実力をつけてからでないと、行っても意味がない」と国内でのプレーを選択。トム・ホーバス男子日本代表監督の指導もあってシュート力により磨きをかけ、B1横浜BCでプレーした2022~23年のレギュラーシーズンで最優秀選手賞(MVP)に輝いた。昨夏のワールドカップ(W杯)や今夏のパリ五輪でも日本をけん引。着実に、それでいて周囲も驚く急成長を遂げた。 井手口監督によると今回のNBA挑戦には通訳や栄養士をつけず「修行だ」と言っているという。「出場時間が長くなればもっと試合を制御できる。実績を積んで信頼を高めてほしい」と期待した。(山崎清文、末継智章)