学生の“教員離れ”が止まらない…「合格者の7割が辞退」「定員割れで秋採用実施」自治体の苦しい現状
今年も教員採用試験の結果が続々と発表されました。様々なところで教員不足のニュースを目にしますが、現場の教員が足りないだけでなく、新しく教員になろうとする若者が減っている状況も深刻です。 この結果を分析し、学生たちの希望と教育現場の労働環境とのギャップについて考察します。元小学校教員としての経験を交えながら、その背景に迫ります。
多くの自治体で低倍率となった教員採用試験
東京都教育委員会が発表した「令和6年度東京都公立学校教員採用候補者選考(7年度採用)の結果」によると、今年度の教員採用試験(小学校)において、受験者は2441名、合格者は2118名、受験倍率は1.2倍でした。倍率が1倍台の自治体は東京都だけではありません。 北海道1.5倍/秋田県1.1倍/新潟県1.3倍/千葉県1.1倍/横浜市1.6倍/鹿児島県1.2倍 このように、多くの自治体で低倍率の結果となっています。教員採用試験を合格しても、その後辞退して民間企業の内定を承諾する学生もいることを考えると、実質、採用予定数をクリアできない自治体も出てくることでしょう。 私が教員採用試験を受けたのは10年以上前ですが、当時の倍率は首都圏で5倍以上は当たり前でしたし、地方では10倍以上の自治体もありました。 かつては人気の職業と言われていた教員ですが、どうしてこのような事態になってしまったのでしょうか。
教育実習での体験とネット上の口コミが影響か
学生が教員になることを目指す理由は様々だと思います。かつての恩師への憧れ、勉強が好き、教えることが好き、子どもの苦手を得意に変えてあげたい、など。希望をもって教職を志し、大学で一生懸命に勉強して教員免許を取ります。 そして、教育実習に行くと、気づくのです。「こんなに大変なんだ…」と。授業準備はもちろん、児童指導、保護者対応、膨大な事務処理・会議の数々…現在の教育現場は多忙を極め、教員に大きな負担をかけていることは明白です。 さらに、XなどのSNSには現場の教員の悲痛な叫びが数多く投稿されています。文科省が始めた「#教師のバトン」プロジェクトは、教員のやりがいを発信し、教職希望者を確保するための試みでしたが、実際に集まったのは現場の厳しい労働環境を嘆く声でした。 みなさんも、転職活動をするとき、その会社がどんな会社なのか情報を集めたり、そこで働いている社員がどう感じているかを調べたりしますよね。ECサイトでお買い物をするとき、商品の口コミを読みますよね。 悪い口コミがあったら「やっぱりこの会社はやめておこう」「この商品を買うのはやめよう」となります。同じように学生も「教員になるのはやめておこう」となってしまうのです。