京成電鉄に噛みついた英投資ファンドに「賛成率30%」の意味 オリエンタルランド株の売却を迫る提案は退けた
京成電鉄はディズニーランドが位置する千葉県浦安を通る鉄道を運行していないものの、1960年に当時の社長らの提案でテーマパークの建設を目指してOLCを設立した経緯がある。 以来、60年以上にわたり筆頭株主として同社株を保有。現在は子会社ではなく持ち分適用会社となっているが、京成電鉄の株主の間には今なおOLCに親近感を持つ人が多いようだ。 ところが、京成電鉄の時価総額約8900億円に対して、OLCの時価総額は約8.2兆円(ともに6月27日時点)。京成電鉄が持つOLC株の時価は、京成電鉄の時価総額を2倍近く上回ることになる。
この資本のねじれにつけ込んだのが、パリサーだった。2021年8月ごろから京成電鉄株を取得したと推察される。 パリサーはこれまで、「OLC株が京成電鉄の企業価値に比べ大きすぎる。OLC株を部分的に売却すれば、京成電鉄は約4200億円の潜在価値を顕在化することが可能となる」と強調してきた。「京成電鉄は本業の鉄道事業に注力するべき」とも主張した。 株主提案の否決を受けて、パリサーは次のようなコメントを出した。
「資本配分という京成電鉄の将来にかかる重要な問題について、すべての株主の皆様が経営陣に対して意見を表明する機会を確保するという最も重要な目的は達成できた」。今後も長期的に京成電鉄株を保有する意向だ。 ■ただし「完勝」とは言えない 否決されたとはいえ、今回パリサーが京成電鉄に突きつけた経営課題としての意義は小さくない。 現状を維持するのであれば、多額のOLC株を保有する合理性を説明できなければならない。京成電鉄は収益柱である成田空港への輸送力強化を重要な戦略のひとつに掲げている。資本効率を意識しながら、成田空港アクセス路線を中心に適切なタイミングでの投資計画と成長戦略を実現できるか。
前出の市場関係者は、「パリサーの提案が得た30%という賛成率は京成電鉄にとっても胸を張れる数字ではない」と指摘する。完勝だったとは言えないわけだ。今後も株主に〝答え〟を提示していく必要がある。
梅咲 恵司 :東洋経済 記者